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現代編集論

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編集の新しい可能性を深化、探索における思索をまとめていきます。
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記事一覧

コンテンツにナラティブの力を用いるかどうか

以前、こちらのブログでは、朝日新聞での西田亮介さんのコラムを踏まえて、企業の情報発信におけるエピソード主体の記事の扱い方や「機能のジャーナリズム」について触れました。 先日、朝日新聞にこちらの西田さんのコラムを踏まえてのオンラインインタビューの記事が掲載されていたので、こちらも読んで考えたことをメモ的に。 ナラティブと「ヒューマンインタレスト(human interest)」の違い、ナラティブとデータの相互補完の必要性等について触れられています。人ものや人情ばなしとして、

「基準」と 「規準」

「基準」という言葉は馴染がありますが、日本語には「規準」という表現もあるようです。それぞれ、広辞苑によると以下のような意味を持つとのこと。 一般的には「基準」に統一され、厳密な使い分けはないようですが、この「規準」という言葉は興味深いですね。 メディアを運営したり、コンテンツをつくったりする際、「万人にとって良い」というものは存在せず、判断や議論の土台をつくる必要があります。 そのために「基準」を確かめ、言語化していくという作業が必要だという話をしてきました。言語化した

コンテンツ・モデレーションの必要性

日々、様々なコンテンツに触れるなかで、他のユーザーの「コメント」とセットで面白さが生まれているシーンが増えましたね。漫画や映像を楽しむ際にも、コメントと照らし合わせながらだと、また違った面白さがあります。 ただ、そうしたコメントも常に良いものばかりとはいえず、「荒らし」に近いものや、他者を攻撃するような内容のものも多く見られるのは残念な部分。表現や発信をする人は、なんらかの形でこうした問題と向き合っていかなければなりません。 SNSや口コミサイトなどにおける不特定多数のユ

「マルチホーミング」とコンテンツメイク

最近読んでいる本の一冊が『ビジネスエコシステム』というものなのですが、本書のなかに登場していた「ホーミング」という概念が参考になりそうだったので、メモ的に。 ホーミング(homing)とは、プラットフォームに関連する人たちが「プラットフォームをホーム(住まい)とすること」に関する観点。これにはシングルホーミングとマルチホーミングの2種類が存在します。 シングルホーミングはいずれか1つのプラットフォームをホームとすることを指し、マルチホーミングは複数のプラットフォームをホー

小さなメディアたちの持続可能性と文化の多様性

文化の多様性に関するユネスコ世界宣言には、このように記されています。こうした文化の多様性をもたらすために必要な要素は多々ありますが、そのうちのひとつに、小さなメディアがあると考えています。 様々な文化ごとに、その存在に光を当て、存在を可視化する存在としてのメディアが必要です。もちろん、マスメディアが担うべき役割もありますが、広くカバーするマスメディアでは、どうしても一つひとつの文化を取り上げる際の掘り下げ具合や取り上げる頻度が少なくなってしまいます。 たとえ小さくとも、文

"事務"という生活の知恵と技術

坂口恭平さんがポパイウェブにて連載していたマンガ『生きのびるための事務』の単行本を読みました。坂口さんが大学を卒業して仕事をし始めた時代のエピソードを漫画形式で紹介しながら、自分のやりたいことを実現するために大切な考え方やテクニックなどを伝えています。 ここでの「事務」は、いわゆる事務作業のようなものというより、事象に対する向き合い方、お金や時間の使い方、行動の起こし方などの、知恵や技術という感じ。それを坂口さんのイマジナリーフレンドとの対話を通じて伝え、実践のプロセスを順

小さなネットメディアが生き残るために事業を開発する力を磨く

ペイウォールも増えましたが、ネットメディアはまだまだ無料で読めるものも多い状態です。そのコンテンツの無料提供を支えてきたのが、広告収益でした。 こうしたデジタル広告はサード・パーティー・クッキーを中心とした技術によって収益を上げてきました。ですが、サード・パーティー・クッキーの規制によって、ターゲティング広告の配信に大きな制限がかかることで、ネットメディアは収益の大幅な下落が予想されています。 こちらの記事でその背景の解説とともに、収益が減少した媒体が2つの「危険な選択」

コンテンツづくりを始める前に「コンテンツブリーフ」で要件を定義する

オウンドメディアを運営する、採用コンテンツをつくる、事例コンテンツをつくるなど、企業にとってコンテンツをつくるニーズは多々あります。 コンテンツは多くの人が見たことがあり、「コンテンツをつくろう!」とすると、イメージができているように思いやすいもの。 一方で、複数の関係者とともにコンテンツづくりを進めていく際には、コンテンツをつくる上での様々な条件を確認することが欠かせません。 例えば、広告やマーケティングなどでは制作物を作成する前に「クリエイティブブリーフ(Creat

コンテンツづくりにおける品質・コスト・納期の「QCD」を考える

コンテンツメイキングでは、より良いコンテンツを、納得できる単価で、希望する納期までに届けることが求められます。これらの要素は、相互に関係して成り立っています。 製造業では、これらのバランスを考えることをQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字をとって「QCD」と表現されます。これらをすべて達成することは難しく、コンテンツをつくる際はこれらのバランスや優先順位を考えながら取り組む必要があります。 例えば、Quality(品質)を優先すると

安心して記事を読めるメディアを目指して

ブログメディア「Publickey」の運営に関する発信は、メディアを運営する人間として、ずっと勇気と刺激をもらっています。直近のPublickeyの広告掲載について説明したエントリもそのひとつ。 メディアの運営と広告は密接に関係しています。メディアの収入を伸ばすために、広告を掲載して、それが読者の体験を損ねているケースも、けして珍しいものではありません。 読者の体験を損ねる広告を掲載していても、読者にとっても、広告主にとっても、メディアにとっても、良いことにはならないはず

「きく」を深める面白さ

soarがつくっている学びの場「soar campus」での新たな試み、インタビューの講座が本日で終わりました。 soarがこれまで出してきた記事は人のライフストーリーを聴き、テキストでまとめてきたもの。その作り方を紐解いて共有する講座です。 はじめての企画でしたが、多くの方に参加いただけて、とても良い場として最後まで運営できました。今後も、メディアの運営から得られた学びを共有する機会として講座は重ねていけたらと考えています。 僕の役割はたまにいただいたご質問にお答えす

プロジェッタツィオーネに学ぶ、「控えめな創造力」

東京ミッドタウン・デザインハブで開催されていた『PROGETTAZIONE (プロジェッタツィオーネ) イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力』に行ってきました。 展示タイトルにもなっている「プロジェッタツィオーネ(Progettazione)」とは、イタリア語で「プロジェクトを考えて、実践すること」を意味する言葉。「Design」という用語が一般的でなかった第二次大戦後のイタリアでは、プロジェッタツィオーネがデザイン哲学。 プロジェッタツィオ

プロジェクトの編集に挑戦する

昔からインクワイアの仕事を手伝ってくれている編集者の岡田くんが新しいプロジェクトを始めました。インディペンデントに活動する音楽アーティストを総合的に支援するミュージック・インキュベーター「B-Side Incubator」です。 岡田くんはすでにアカデミック・インキュベーター「DeSilo」のプロジェクトも仕掛けており、また違った切り口での活動となります。 こうしたプロジェクトは個人の問いや探究テーマ、問題意識から立ち上がります。プロジェクトとしてまとめあげて、社会に問い

自然・文化・歴史を分かり易く人々に伝える技法「インタープリテーション」を学びたい

編集の可能性や、社会において求められる役割を果たすために、他領域の概念に触れてヒントをもらうようにしています。 例えば、非専門家に対して科学的なトピックを伝える「サイエンスコミュニケーション」がどのような考えで実践されているかを知ることは、技術に関連したコミュニケーションを行う上でのヒントがあります。 最近、関心を持っているのは「インタープリテーション」。インタープリテーションとは、自然や歴史・文化の魅力や価値を紹介し、地域と来訪者を結びつける活動。 自然公園や歴史遺産