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現代編集論

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編集の新しい可能性を深化、探索における思索をまとめていきます。
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記事一覧

人と人をつなぐ場の価値

株式会社⽇建設計と株式会社Zebras and Companyによる、共創型社会環境デザインプログラム『FUTURE LENS(フューチャーレンズ)』がスタートしました。 Facebookの投稿で知りましたが、両社のキーパーソンを偶然紹介できたのがきっかけになっていたそうです。インクワイアが主催していたデザインフェスティバル「Featured Projects」で見かけた際に、おつなぎしました。 その後、上記のプログラムとして形になっていく過程には全く関わっていませんが、

「メディアコンピテンシー」の重要性

マスメディアの発信する情報への信頼が低下しているという言及が増えてきました。とはいえ、SNSで発信される情報が信頼できるかというと、見極める難易度は非常に高い。 こうした情報環境のなか、デジタルから離れて仕事や生活をすることも難しくなっていて、共存のためにデジタルの適切な利用の方法「メディアコンピテンシー」を身に着けていく必要があります。 「メディアコンピテンシー」は、情報やメディアを効果的に利用し、理解し、評価する能力を指します。この概念は、デジタル時代において重要性が

課題解決と双方向性を取り入れた企業の情報発信

サステナビリティ経営やパーパス経営といった経営のあり方が注目されるようにもなっているなかで、企業自らが情報発信する重要性はますます高まっています。 特に、社会課題への取り組みや持続可能性に関する発信は、企業の存在意義(パーパス)を社会に伝える手段としても重要であり、こうした発信を行ううえでは「ブランドジャーナリズム」のような活動も注目です。 ブランドジャーナリズムは、ブランドや企業が自らジャーナリズム(報道活動)の視点を持って自社メディアで情報を展開し、認知度を高めていく

特定多数向けに信頼できる情報を集約する場

以前、インターネット情報をさがすためには、まずいろいろな情報が集約されるポータルサイトにアクセスし、そこから閲覧していくのが効率よい手段でした。 その後、RSSやメールマガジン、検索エンジンやSNS、特化型のウェブサービスなどの登場により、効率のよい情報収集の手段は変化していき、近年はSNSが主流だったように思います。 ただ、SNSのアルゴリズムはだんだんと変化し、特段みたくない情報ばかりがレコメンドされる「おすすめ」への誘導が強くなり、流通する情報も虚偽のものも多く、誰

「聴く」を習う

「聴き方」って、どこかで習うようなことではないですよね。けれど、「聴く」というのは日常のあちこちで行うことであり、他者にも影響を与えるもの。 国立成育医療研究センターが10月31日に発表した内容によると、保護者や教員が声を聴いてくれていると子ども自身が感じていると、生活の質(QOL)が高くなることが分かったそうです。 それくらい「聴いてもらえている」と相手が感じることは、相手の状態に影響を与えるんですよね。これは子どもを対象にしたものだけでなく、大人を対象にしたインタビュ

書籍『メタフィジカルデザイン つくりながら哲学する』

問いとアイデアの総合商社、セオ商事の代表であり、哲学カルチャーマガジン『ニューQ』編集長の瀬尾浩二郎さんの著書『メタフィジカルデザイン つくりながら哲学する』を読みました。 書籍のタイトルにもなっている「メタフィジカルデザイン」とは、ニューQで提唱してきたデザインと哲学を横断する試みのこと。本書では、その概念に至るまでの過程を丁寧に説明されていた印象です。 瀬尾さんは、哲学するための手法として「問い」と「概念工学」の2つを紹介しています。手法の解説に加え、実際にワークを行

AI検索サービスに対応するコンテンツづくり「コンテンツAIO」を考える

「Perplexity」や「Genspark」など、AI検索サービスが登場して、利用する人も増えてます。つい最近、GoogleやOpen AIなどもAI検索に対応するサービスのリリースを発表しており、よりこの流れは強くなりそうです。 すでにページへのトラフィックにAI検索サービス経由が増えているというケースも登場しており、SEOならぬAIO(AI最適化)という言葉も登場しています。 SEOはコンテンツづくりにおいても重要なテーマで、コンテンツSEOというのはWebでコンテ

ものを長く使いたいと思う自分に整える

ものをつくる際の環境負荷を下げる、使わなくなったものを修理して使い続ける、使わなくなったものを誰かにゆずる、使わなくなったものを再利用する、資源化するなど、環境に配慮したものに対する向き合い方は変わってきています。一人ひとりが生活の場面で取り組みやすいのは、長く使いたいと思う自分に整えていき、実践することではないでしょうか。 「ロングライフデザイン」を掲げて活動してきたD&DEPARTMENTが、「デザイン」を名乗らない新しい“ロングライフデザイン”の提言である「ロングライ

コンテンツの要望・要求・要件・仕様を分けてみる

コンテンツをつくる際、形になってきたところで関係者の間で「つくりたかったものと違うな…」とズレが生じてしまうことがあります。ズレはつくっていく過程でどんどん広がっていくため、前の段階でズレがないようにチューニングすることが大切です。 そのためには、はじまりに近いタイミングで、「どんな目的で、どんなものをつくるか?」をできるかぎりすり合わせること。以前紹介した「コンテンツブリーフ」などは、すり合わせのためのツールのひとつです。 ただ、こうしたフレームを埋めても、まだすり合わ

ニッチかつインディペンデントなメディアの役割

ニッチなメディア、コミュニティのメディアがどのような役割を果たせるかということについてしばしば考えます。最近の仮説は、以下のような役割を担えるといいのではないかというもの。 コミュニティの経験や知識、物語を集める コミュニティから得られたものをアーカイブする アーカイブされた内容をキュレーションし、企画を立てる 企画を通じて対話を促す こちらのコミュニティ・アーカイブとメディアの役割について書いたブログから、大きく変わっていませんが、少しだけ更新しました。 インデ

技術における社会的持続可能性

先日、技術進歩によって広がるデジタルデバイドに関する問題意識について簡単に触れました。 この観点をさらに広げて捉えてみると、「テクノロジーにおける社会的持続可能性」というテーマに接続します。Spectrum Tokyoにて、北欧のデザインメディア DeMagSign の翻訳記事が掲載されていたので、そちらを引用。 同記事では、技術分野で社会的持続可能性を達成するために必要な3つの重要な原則として「包括性」「透明性」「意図性」を挙げ、原則にそっているかどうかをチェックするた

記憶や経験をアーカイブしてコンポスト化する

NTT出版が運営する、人/自然/テクノロジーのつながりを問いなおし、新たな〈距離〉を考えるメディア「DISTANCE.media」でドミニク・チェンさんが執筆していた記事がとてもよかったのでメモ。 ジャーナリングを通じて、「わたし」の記憶を漬けることが、「記憶のケア」にもなり、「わたしたち」が立ち上がるということなど、様々な観点で語られています。 このnoteでは、コンテンツやメディアを中心に、自分の活動領域のヒントになりそうなところを引用して残します。 ドミニクさんの

よい講座は共につくる

運営するメディアでは、活動の積み重ねによって生まれたつながりや知識などを活かして、「講座」を開発しています。記事や音声などよりも、さらに深く知恵を共有するために、大切なコンテンツです。 講座をよりよいものにするためには、よい講師の方々に登壇いただくことはもちろん、意欲があって主体的な受講生の方々、講師や受講生のみなさんが快適かつ安心して学べるようにするための運営。これらのかけ合わせが欠かせません。 「創造実践学」などを専門とする慶應義塾大学の井庭崇教授は、探究学習をより有

マルチステークホルダーとの合意形成と、新たな「あたりまえ」

博報堂 執行役員 エグゼクティブ クリエイティブディレクター/博報堂ケトル ファウンダーの嶋浩一郎さんの著書『「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書』を読みました。 誤解されて伝わることも多い、「パブリック・リレーションズ(Public Relations)」の本質を問い直し、PRの真髄をマルチステークホルダーとの「合意形成」として、その実践方法を紹介した内容です。 マルチステークホルダーとの合意形成を行い、これまでは「あたりまえ」でなか