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10期目を迎えたインクワイア、「創造」をキーワードに考える2025年の目標と現在地

インクワイアは、2024年10月から10期目に入り、少し先の2025年10月29日には10周年を迎えます。2025年も、そして10期目のインクワイアもどうぞよろしくお願いします。

本来は期に合わせて10期目の目標などをお知らせしたほうがよかったのですが、10年という区切りもあり、新年の抱負と合わせて、インクワイアのこれからについて紹介させてください。

会社の在り方と成り方を考える

インクワイアは、「問いの探究」と「変容の触媒」という2つの理念を設定しています。内的と外的の理念を調和させることで、時代や社会の変化に適応しながら、持続的に未来に向かって活動することを大切にしています。

静態的なもの、在り方(Being)として捉えており、この理念を踏まえたうえで動態的なもの、成り方(Becoming)を改めて言語化していこうとしています。

それぞれの概念の関係はこんなイメージ

どのように成っていくのかのプロセスを考えるためには、目指す方向性や地点を決める必要があります。これはパーパスやビジョンといった言葉で位置づけられるものになるはず。

インクワイアとしての目指す先を考える上では、内発的なものだけでなく、今後の社会がどのような方向に向かうのかを視野に入れ、考慮することも必要です。

「創造的な経済社会」に向けて

内閣府は、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会を「Society 5.0」と呼び、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」としています。

AIやロボティクスなどをはじめとするテクノロジーもより一層重要な役割を持ち、これらを活かして経済発展と社会的課題の解決を両立するこの社会を、日本経済団体連合会(経団連)は「創造社会」と名付けました。インクワイアは、創業以来ビジネスやテクノロジーの発展、社会課題の解決などを探究し、発信してきました。来るSociety 5.0においては、より自分たちが果たすべき役割が大きくなると考えています。

ただ、「人間中心の社会」をどう捉えるかは考えなければなりませんし、こうした社会が「与えられる」類のものではないようにしなければなりません。こうした観点を持ちつつ、合わせて考えたいのが、應義塾大学総合政策学部教授の井庭 崇さんが提唱する「創造社会」です。

こちらの創造社会では、何かを「創る」ことに価値の中心が移動すると、そこから現代社会が抱えている問題を乗りこえることができるのではないか、というビジョンを提示しています。

「つくる」ことへのシフトは、単につくる喜びやそれに付随する学びを得られるだけではなく、「卒 経済依存」「卒 資本主義」の道を進むことなのだ、と最近気づいた。自分で「つくる」暮らし・生き方をすることで、経済システムから離れることが可能になる。これが、創造社会の姿であろう。人は、自ら「つくる」ことで、経済システムから自由になることができるのである。

もちろん、経済がまったく不要になるということではない。完全自給自足にこだわってしまうと、それはそれで不自由になるし、経済によって成り立つよいこともいろいろある。その価値を認めた上で、経済から適度な距離をもって関わることができるようにすることを目指すのが、「卒 資本主義」への創造社会ヴィジョンである。

ともに「創造社会」というキーワードを使って、これから到来する社会を名付けていますが、個人的には経済システムを軸にしているビジョンと、社会システムを軸にしているビジョンとに分かれていると感じています。

ただ、いずれも「創造」が重要であることに変わりはありません。インクワイアとしても、これまでイノベーションや共創、テクノロジー、持続可能性や循環型社会、共生社会など、さまざまなテーマを探究してきました。これらのテーマを横断する際の軸をどこに設定するかを探し続けていたのですが、いずれも人の「創造性」がカギであると捉え直せたらと考えています。経済システムと社会システムの双方において、人々の創造性が解放されるようにはたらきかけられたらと。

「創造社会」「創造経済」などの要素を盛り込んだ、「創造経済社会」あるいは「創造性あふれる経済社会」の実現を目指して、活動していくことを目指せたらと考えています。会社として、その実現のために働きかける領域を以下のように整理してみています。

経済と社会、それぞれに既存のプレイヤーと新規のプレイヤーが存在していて、それぞれにあった支援の仕方があります。経済は比較的わかりやすく、【経済・既存】であれば、成長スタートアップや大企業の新規事業創出など。【経済・新規】であれば、B Corpやゼブラ企業、カルチャープレナー、ポスト成長型などの名称で呼ばれるプレイヤーが支援対象になります。

また、非経済の領域も視野に入れて会社としての活動(≠事業)をつくっていけたらと考えています。社会システムのなかには、市場や経済で解決できないもの、もしくはすべきでないものもあります。そうした活動に対してどう支援するのか。【非経済・既存】に対する支援は、フィランソロピーと呼ばれるようなものになるかと思います。

【非経済・新規】という領域は、まだ経済にも非経済にも発展しうる、探究が始まる場所。ここで無理に方向性を定めてしまうことは、主体となる人の創造性を阻害してしまうこともありえると考えています。そのため、余白をもたせつつ、支援の方法を模索していけたら。

創造的な経済社会を実現していくために、インクワイアなりの社会に対するレンズを設定して領域を整理し、それぞれにアプローチをするために活動を展開していこうと考えています。

創造の触媒となるための5つの活動要素

こうした背景を踏まえて、どのような活動をしていくのか。インクワイアとしては活動の要素を5つに整理しています。

Labにおける探究を核としながら、メディア、クリエイティブスタジオ、スクール、コンテンツレーベルという4つの要素を配置。それぞれの要素が相互に関係しながら、活動を展開していくことをイメージしています

複数の問いをたて、探究を行いながら、そのプロセスをメディアで共有したり、スクールで講座にしたり、レーベルでコンテンツにまとめたり、スタジオで実践を支援したり、という活動をしていこうと考えています。

これは現在の姿というよりは、目指す姿を考えたものになるため、この方向性に向けて、活動を育てていかなければなりません。では、足元の10期目はどのような活動を行っていくのかについてもまとめてみます。

10期目の事業活動の展望や挑戦

活動要素のなかで、10期における事業活動として位置づけられるのは、主に主にクリエイティブスタジオとメディアです。

さきほどの図における【経済・既存】【経済・新規】の領域に対して、ソリューションを提供していくことで、直接的・間接的に実践者を支援していくことを目指します。

inquire Studio

クリエイティブスタジオ「inquire Studio」では、編集とデザインの技術や知識を活かして、企業の社会的・経済的価値の創出に向けた支援に取り組んでいきます。

これまでも提供してきたことを踏襲しつつ、新しいソリューションの提供も目指して、アップデートしていきます。主に取り組んでいくのは、以下のような内容です。

  1. オウンドメディア立ち上げや運用支援

  2. 価値を伝えるコンテンツづくり

  3. 編集デザインを活かした経営支援

オウンドメディアの立ち上げや運用支援

メディア立ち上げや運用では、コーポレートブランディングを目的としたオウンドメディアや、コミュニティと連動する形でのオウンドメディア運営などを支援しています。

長らくオウンドメディアの支援に関わってきていますが、時とともに重要なことが変化してきています。ひとつひとつのオウンドメディアにおける最適な形を共に考えて実行に伴走するだけでなく、複数のオウンドメディア間での「共創」を支援するような活動ができないかと考えています。

また、近年は企業と顧客の関わり方も変化していて、オンライン・オフラインでの顧客のコミュニティを形成する「コミュニティマーケティング」の潮流も強くなっています。

事業者などが、製品やサービス利用者を対象として主宰する「コミュニティ」との双方向のコミュニケーションを通して、顧客同士の交流と情報発信を促すことで、顧客の製品・サービスへのロイヤルティ創出、向上に貢献すると共に、(1)顧客理解、(2)顧客育成、(3)顧客創造を、相互に連動させ、スケーラブルに実施すること。

一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会

インクワイアは、創業以来コミュニティメディアをつくり、運営してきたこともあり、コミュニティと相性のよいメディア運営についての知見を活かしていくことにもチャレンジできたらと考えています。

加えて、コーポレートブランディングやBtoBマーケティング、コミュニティマーケティングなどのために運営するオウンドメディアやメディアサービスが、オーディエンスにきちんと情報を伝えられるようにするために、ユーザビリティの改善を支援するという活動も始めていきます。

企業の価値を伝えるコンテンツづくり

オウンドメディアが手段として有効かどうかは企業文化や目的などによって変化しますが、「コンテンツ」をつくって活用することはより多くの企業にとって重要なことだと考えています。

提供する商品やサービスは高度に専門化が進んでいるにもかかわらず、機能訴求や価格訴求だけでは、ステークホルダーとの長期的な関係にはつながりづらい。そうなると、提供する主体である企業のパーパスや価値観も踏まえて、提供価値を可能な限りわかりやすくステークホルダーに伝えていくことが必要です。

こうした背景を含めて、コンテンツに果たせるいくつかの役割があると考えています。こうしたコンテンツをつくるためには、ビジネスやテクノロジー、企業理解などが必要になると考えていて、inquire Studioの強みや経験が活かせる部分だと考えています。

  1. 商材の無形性に対応する「代替品」として機能するコンテンツ

  2. 企業としての哲学や姿勢、技術などを伝え、信頼を獲得するコンテンツ

  3. サービス化による顧客の継続利用を補助するサポートコンテンツ

  4. 企業のナレッジを蓄積し、アクセスしやすくするためのコンテンツ

  5. 創りながら顧客の理解を促進するためのコンテンツ

編集デザインを活かした経営支援

編集とデザインをかけ合わせて価値を提供することに取り組んできましたが、今期から編集デザインを活かした経営支援にも取り組んでいきます。どのように経営を支援していくのかについては、「デザイン経営」の手法が近いと考えています。

「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。

特許庁はデザイン経営を推進しています|特許庁

特許庁が紹介しているデザイン経営の実践を支援するツール「デザイン経営コンパス」では、デザイン経営を「人格形成」を軸にした「文化醸成」と「価値創造」の循環的な営みとして捉えて紹介しています。

デザイン経営コンパス活用ガイド(P11)より

これらの経営課題に対して向き合う企業を編集デザインで支援するために、これまで実践してきたことを棚卸ししながら再構築していけたらと考えています。

こちらについては随時アップデートしていけたらと思うので、またお知らせさせてください。

inquire.jpやdesigningなどのメディア

inquire.jpdesigningなどの自社メディアでは、情報環境の変化の影響も受け、メディアとしての役割を確かめながら、必要な活動や継続のための試行錯誤を重ねていきます。

さまざまな実践主体に伴走しながら、そのストーリーやナレッジがアーカイブされるよう、支援していけたらと考えています。メディアとして資産を拡充しながら、スクールやレーベルなどの活動要素との接続を目指していくことで、メディアを中心に生態系を育むことに貢献できればと思います。

インクワイアが運営するような、コミュニティメディア、インディペンデントなメディアに対する姿勢や考え方はこれまでにもまとめてきているので、関心のある方は合わせて読んでみてください。

創造のための共同体へ

上記のように、インクワイアでは常時さまざまなプロジェクトが進行しています。約20〜30名のフリーランスや副業のパートナーが社内外のプロジェクトごとに関わってくださっています。

創業時は、企業組織とフリーランスの間の組織について「ギルド型組織」という捉え方をしていました。大きく、仕組みが変わるというわけではありませんが、パートナーとの恊働や共創を強め、共同体としても活動していくために、「クリエイティブ・コレクティブ」として捉え直していきます。

編集者、ライター、デザイナー、フォトグラファーなど、さまざまな専門家が集まり、各自の専門知識やスキル、経験を持ち寄り、新たな価値を創造するために、コラボレーションできるように小さく活動していきます。

今年もどうぞよろしくお願いします!

長文となりましたが、10期目、そして2025年におけるインクワイアの展望や挑戦したいことについてまとめました。

大きく目指していく方向に対する言語化や整理を引き続き進めながら、各要素の歯車が噛み合うようにオーガナイズし、事業活動としてもしっかりと利益を出せる状態を目指していきます。

いろいろな方とご一緒していけたらと考えているので、上記のようなソリューションにご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!

インクワイアでは常に複数のプロジェクトが動いていて、ご一緒できるパートナーの方を随時探しています。こちらも合わせてご覧ください。


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モリジュンヤ
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