「コミュニティ・アーカイブ」とメディアの役割
今年の3月、せんだいメディアテークの展示「星空と路 —3がつ11にちをわすれないために—」を訪れました。主催は、「3がつ11にちをわすれないためにセンター(略称:わすれン!)」。
東日本大震災による甚大な影響に対し、ともに向き合い考え、復興への長い道のりを歩きだすために立ち上がった同センターでは、市民、専門家、スタッフが協働し、震災とその復旧・復興のプロセスを独自に記録・発信し、寄せられた映像、写真、音声、テキストを「震災の記録・市民協働アーカイブ」として保存しています。
もちろん、この展示も素晴らしかったのですが、この展示で出会った「コミュニティ・アーカイブ」について考える時間が増えています。
コミュニティ・アーカイブとは
上記の書籍の執筆にも携わった佐藤知久さんは、10+1のコラムでコミュニティ・アーカイブについて下記のように述べています。
こうした市民による地域コミュニティの出来事の記録は昔から存在していたそうですが、近年のコミュニティ・アーカイブではコミュニティの範囲は地域から広がり、記録手段の変化などが起きています。
例えば、イギリスのコミュニティ・アーカイブ支援団体「Community Archives and Heritage Group」は、同国内の約600におよぶコミュニティ・アーカイブを紹介しており、その対象は職業、セクシュアリティ、障害、共有する関心など、さまざまなアイデンティティや主題、関心などに分類できるそう。
また、東北の震災の頃には、人々がスマートフォンやデジタルカメラを持つようになり、これらの機器による記録を集積する活動が本格化し、数多くのデジタル・アーカイブがつくられました。2017年に設立されたデジタルアーカイブ学会では、4つある部会のひとつとして「コミュニティアーカイブ部会」を置いています。
(デジタルアーカイブは非常に重要だと考え、インクワイアではデジタルアーカイブ学会の賛助会員になりました)
コミュニティ・アーカイブと編集
個人的には、コミュニティ・アーカイブというテーマと、メディアの重なりについて考えていきたいと思っています。以前も書いたとおり、メディアの中でもコミュニティメディアと呼べるものに関わってきました。
コンテンツの流通面における環境変化が激しい今、メディアとしてはアーカイブの面をより意識していく必要があるのではと考えています。また、編集の役割として、自分たちだけでメディアを運営するのではなく、協働的なアプローチをとっていく必要があるとも感じています。こうした背景から、コミュニティ・アーカイブという概念から学ぶべきことが多々あるのではと。
また、ついついどうコンテンツとして「表現」するかという点に関心がいきがちですが、「表現」ができるのはあくまでその前段の素材があってこそ。編集以前の記憶のアーカイブをつくるというコミュニティ・アーカイブから学ぶことは大いにあると考えています。これは編集を加えることによる、取材対象者の話に変化や加工の度合いを自覚するという上でも大事なこと。
様々なコミュニティにおいて、編集者が人類学的なフィールドワークの手法等も踏まえて観察を行いながら、「ジェネレーター」のように自らも参加し、コミュニティの記録や記憶を促すところから関わる、そんな役割がイメージできます。
こう捉えると、編集者、メディアの役割は下記のように捉えることもできるのではないか、というのが最近の考えです。
コミュニティ・アーカイブをつくる
様々なコンテンツとして表現する
コンテンツを媒介に対話や学習を促す
これらはまだ仮説の段階ですが、実践を重ねながら仮説の検証を進めていきたいと思います。