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わたしの文化的土壌

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本、映画、アニメ、マンガなど、自分の文化的な土壌を耕してくれるコンテンツについての体験メモのようなもの。
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記事一覧

組織を見立てるレンズ──『ミンツバーグの組織論』

経営学の大家として知られるマギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授の著書『ミンツバーグの組織論 7つの類型と力学、そしてその先へ』を読みました。 組織づくりに関する書籍は多々ありますが、組織は業種、企業規模、会社の歴史など、様々な様子によって課題や解決策が変化するため、なかなか自社の課題にあった内容に出会うのが難しい。 個人的に、「組織」という共同幻想に向き合う際の難しさについては、令三社の山田さんによるこちらの記述に共感しています。 「組織」というものにどのように向き合

劇場アニメ『ルックバック』観てきました

公開中の劇場アニメ『ルックバック』観てきました。「チェンソーマン」や「ファイアパンチ」などの代表作で知られる漫画家、藤本タツキの長編読切を原作にした作品。原作を読んだときも非常に感銘を受け、どう映像化されるのかが楽しみでした。 上映時間は約60分なので、サッと観られる尺なのもいいですね。一方、短いとはいえ、原作が読切ということもあって、アニメーションで加えられたシーンも多々あり、haruka nakamuraの音楽と共に、楽しんでみることができました。 個人的には、小学生

「経営」という概念の起源

『ソーシャル・イノベーションを理論化する』等の著者である高橋 勅徳さんの著書『アナーキー経営学』を読んでいます。 従来の経営の本等ではなかなか扱われてこなかった、街なかの「野生のビジネス」を経営理論で読み解きながら、野生の経営感覚を紹介している内容です。 内容ももちろん面白いのですが、個人的に印象的なのは冒頭に記載されている経営という概念の起源について。元々、マックス・ウェーバーの宗教社会学のなかで提唱された「Betrieb」というドイツ語に求められると紹介されています。

自立共生のための建築─『ふたしかさを生きる道具』

友人たちが主宰する建築設計事務所「ツバメアーキテクツ」の10年の活動をまとめた書籍『ふたしかさを生きる道具』をご恵投いただきました。 下北沢でのボーナストラックをはじめ、様々な建築プロジェクトを手掛けてきたツバメアーキテクツの背景にある思索に触れられる内容でした。 「建築」は面白いものです。手掛けた建築家がどのような思想を持ち、どのような過程でそれをつくり、建築されたあとにどのような営みが生み出されているのかを感じられるから。パッと見たときのユニークさなども興味深いのです

無為とネガティブ・ケイパビリティ

複雑な問題への対応、長期的に物事に取り組む、システムチェンジなど、取り組むべきことが様々な観点から語られます。こうした対応を進めていく際に、共通して必要になるのが「ネガティブ・ケイパビリティ」です。 枝廣淳子さんが書かれたこちらの本を読んで、ネガティブ・ケイパビリティについての理解を深められただけでなく、システム思考やU理論、バックキャスティングなど、他のキーワードとのつながりも整理できました。 ネガティブ・ケイパビリティとは、詩人ジョン・キーツが最初に述べた「不確実なも

狩猟採集民として現代を生きる

私たちの脳や身体は、人類の祖先が狩猟採集をして生活をしていた頃とほとんど変わっていないという話はよく耳にします。そのために、現代を生きている私たちは集中力の欠如、メンタルヘルス、ストレスなど様々な問題に直面しています。 こうした問題を解決するために「運動」をしたほうがいいという話も繰り返し語られているトピック。運動は大事なのですが、個人的にはせっかくなら問題はどのように生じていて、解決策を実行するとどのように問題が生じた要因に効果を発揮するのかも知りたいと考えます。 そん

センス、インプット、習慣化

編集者の菅付雅信さんの新著『インプット・ルーティン』を読みました。若手クリエイターに向けて、知的インプットの大切さと技法を伝えている内容です。 なぜ、クリエイティブに関わる人にとって、インプットが重要なのか。文章、映像、音楽、食など、様々なジャンルにおけるインプットの考え方と、菅付さんが各ジャンルごとにまとめた100のインプットリストが記載されています。 クリエイティブに関して知識が重要だという内容は、水野学さんの『センスは知識からはじまる』を思い出します。アウトプットが

"事務"という生活の知恵と技術

坂口恭平さんがポパイウェブにて連載していたマンガ『生きのびるための事務』の単行本を読みました。坂口さんが大学を卒業して仕事をし始めた時代のエピソードを漫画形式で紹介しながら、自分のやりたいことを実現するために大切な考え方やテクニックなどを伝えています。 ここでの「事務」は、いわゆる事務作業のようなものというより、事象に対する向き合い方、お金や時間の使い方、行動の起こし方などの、知恵や技術という感じ。それを坂口さんのイマジナリーフレンドとの対話を通じて伝え、実践のプロセスを順

チームレジリエンスをいかに高めるか

日本能率協会マネジメントセンター(JMAM )から出版されたチームづくりの書籍『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』をご恵投いただきました。 という言葉が冒頭に記されているのですが、この言葉はチームをマネジメントしてきた立場として本当に耳も胸も痛い…。 本書は、困難をしなやかに乗り越え回復する力である「レジリエンス」を、近年重要度が増している「チーム」という単位で発揮できるようにする必要性や方法論について紹介された書籍です。 個人のレジリエンスや組

映画配給会社ロングライドのポップアップイベントへ

映画配給会社ロングライドが運営するLONGRIDE STOREのポップアップイベント「LONGRIDE STORE POP UP」が開催されるとのことで、映画『関心領域』を観た足で渋谷区神山町にあるコンセプトショップ「style department_」へ。 ロングライドは、ジム・ジャームッシュ、ケン・ローチ、ウディ・アレンなどの監督の洋画作品を配給する会社。ポップアップイベントでは、オンラインストアや劇場でのみ販売されていた人気商品やポスターの再販に加え、ロングライド作品

幸福度や創造性を高める環境を考える──書籍『デザインフルネス』

デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」のことをさす言葉「ヒュッゲ(Hygge)」が、2016年ごろから日本でも話題になることが増えました。 他にも、スウェーデン語には、居心地のよい空間で気持ちが落ち着き、心からリラックスできることを表わす「ミィーシグ(Mysig)」なんて言葉もあるようです。 近しい概念自体は他の国にもありそうですが、北欧の概念を通じて再発見が起きている自体は面白いですよね。冬が長く、家で過ごす時間が長い北欧で生まれた概念ではあるので、そのあた

書籍『クリティカル・ビジネス・パラダイム――社会運動とビジネスの交わるところ』

山口 周さんの新著『クリティカル・ビジネス・パラダイム――社会運動とビジネスの交わるところ』を読みました。 内容は、「社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネス=クリティカル・ビジネスという新たなパラダイムの勃興によって、経済・社会・環境のトリレンマを解決する」という仮説を紹介するもの。 前著の『ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す』では、「エコノミーにヒューマニティを回復させる」ことを提唱し、その実現のためのアプローチのアイデアを紹介していました

映画『マウリポリの20日間』

この週末は映画『マウリポリの20日間』を観に行きました。ロシアがウクライナ侵攻を開始した後、ミスティスラフ・チェルノフ監督がAP通信のチームと共にマリウポリで集めた映像を編集した作品です。 マリウポリでの出来事はニュースで断片的にしか知ることができていませんでしたが、本作ではチェルノフ監督とチームがロシア軍に包囲された街から脱出するまでの20日間の様子がまとめられています。 正直、爆撃される街の様子、街なかで横たわる死者、病院に運び込まれる民間人、子どもを失って慟哭する親

「ステートメント」を書くために

「パーパス」の重要性が声高に叫ばれる中で、多くの企業が掲げる方針、約束、声明、宣言などの「ステートメント」の重要性は増しているように感じられます。 一方で、こうしたステートメントをどう表現するかについての発信は多くはありません。What to SayとHow to Sayであれば、ほとんどがWhat to Sayについての言及です。 そんななか、コピーライター・クリエイティブディレクターの岡本欣也さんの著書『ステートメント宣言。』は、参考になる視点をいくつか与えてくれる書