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コンテンツログ

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本、映画、アニメ、マンガなど、自分の文化的な土壌を耕してくれるコンテンツについての体験メモのようなもの。
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記事一覧

セルフ・コンパッションがイノベーションプロセスを支える

ビジネスリサーチラボ代表の伊達 洋駆さんの著書『イノベーションを生み出すチームの作り方 成功するリーダーが「コンパッション」を取り入れる理由』を読みました。 イノベーションについて扱った書籍は数多くありますが、イノベーションとセルフ・コンパッションの関係についての言及を主題とした作品はほとんどなかったように思います。 本書では、イノベーションを生み出そうとする組織が抱える課題、その課題を乗り越えていくためにセルフ・コンパッションがなぜ有効であるのかを研究データなどを引用し

映画『ロボット・ドリームズ』

スペインのパブロ・ベルヘル監督が初めて手がけた長編アニメーション映画『ロボット・ドリームズ』を観ました。原作は、アメリカの作家サラ・バロンによる同名グラフィックノベル。擬人化されたさまざまな動物たちが暮らす1980年代ニューヨークでを舞台に、ドッグとロボットの物語をセリフやナレーションなしで描いています。 手を振る、手をつなぐ、笑い合うといったキャラクターの表情や動きからは、セリフがなくとも様々なことが伝わってきます。セリフやナレーションがなくともこれだけのことが伝わるのだ

劇場版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』

『エヴァンゲリオン』シリーズを手掛けたスタジオカラーとサンライズが共同製作する新たなガンダムシリーズ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のTVシリーズ放送に先駆け、一部エピソードを再編集した劇場先行版を観てきました。 監督は『フリクリ』『トップをねらえ2!』などを監督した鶴巻和哉。シリーズ構成・脚本には『少女革命ウテナ』や『STARDRIVER』の榎戸洋司。『ヱヴァンゲリヲン』シリーズ等を手がけた庵野秀明も脚本として参加する豪華作品。 もともと、ガ

映画『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』

映画『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』を観ました。大統領に当選するより以前のトランプの歩みはあまり詳しくは知らないため、これを機に触れてみたいと考えて劇場に足を運びました。 監督は、『ボーダー 二つの世界』や『聖地には蜘蛛が巣を張る』などを手掛けたアリ・アッバシ。主演としてトランプ役を演じるのはセバスチャン・スタン。ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ役で知られる俳優ですね。過去の作品で観た印象と全く異なり、メディアで見かけるトランプを彷彿とさせる場面がい

映画『I Like Movies』

「自分が好きなものはなにか」を自覚した上で、「それが好きだ」ということを他者に伝えるのは、案外難しい。 僕は映画が好きだけれど、自分よりも映画が好きな人はたくさんいると感じる。自分よりも好きの度合いが強い人たちを想起すると、「映画が好きなんです」と伝えることは少し憚られてしまう。 本当は、他者との比較でなく、自分が好きだと感じるかどうかが大切で、自分が好きだと感じるなら、それを伝えられるといいはずだ。だが、実際には「好き」にはいろんな要素が関係してくる。 まだレンタルD

「ヒューマナイジング・ストラテジー(人間くさい戦略)」を実践する『二項動態経営』

野中郁次郎さん、野間幹晴さん、川田弓子さんによる著書『二項動態経営』を読みました。本書では、「安定と変革」「短期と長期」「効率と創造性」など、いわば相反する二つの要素を、「どちらか」を選ぶ二項対立ではなく、「あれもこれも」を同時に追求する二項動態の実践が重要であることを説いています。 書籍内では、二項動態経営とはどのようなものなのかの概念、バンダイナムコ、エーザイ、ユニ・チャームなどの実践例、実践のために必要な考え方などを紹介しています。 著者のひとりである野中郁次郎さん

書籍『編集宣言 エディトリアル・マニフェスト』

「編集工学」の方法論や、書籍紹介サイト「千夜千冊」などで知られる編集者の松岡正剛さんが2024年8月に逝去されました。 知の巨人や博覧強記といった言葉で表現されることも多かった松岡さん。編集ということを仕事にしている人間として、少なからず影響を受けています。 そんな松岡さんがオブジェマガジン『遊』の編集長をしていた時代に綴った編集術をまとめた『編集宣言 エディトリアル・マニフェスト』として出版されています。 本書には、松岡さんの編集に関するエッセイが収録されています。本

書籍『ストイシズム』

古代ギリシャ・ローマにおいて発展した哲学思想の一つにストイシズム(ストア派)があります。代表的な思想家として、ゼノン、セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウスなどが挙げられます。 ストイシズムは、「美徳」を重んじて実践し、個人の道徳的・倫理的幸福を追求すること、分でどうしようもない事象にとらわれることなく、自分が向き合える事象に集中することなどを説いています。 個人的には、ストイシズムの思想はしっくりくるものが多く、好んで取り入れるようにしているのですが、『ストイシズ

映画『キノ・ライカ 小さな町の映画館』

フィンランドのヘルシンキから1時間ほど離れた場所にカルッキラという町があります。長らく鉄鋼の町として続いてきたここで、今は使われなくなった鋳物工場を活用して、はじめての映画館「キノ・ライカ」がオープンしました。 この映画館の共同経営者であり、この町出身の映画監督であるアキ・カウリスマキをフィーチャーした初めてのドキュメンタリー映画が上映されているということで、ユーロスペースに観に行ってきました。 小さな町の映画館がどのようなものなのかを観たいと考えていたのですが、カルッキ

ドキュメンタリー映画『マミー』

二村真弘監督のドキュメンタリー映画『マミー』を観てきました。今年の夏に上映された映画ですが、田端のシネマ・チュプキ・タバタでアンコール上映が行われていたので、そちらに。 この作品は、1998年7月に起きた「和歌山毒物カレー事件」について取材したもの。当時、自分は子どもでしたが、連日メディアでこの事件につ いて報道されていたことを覚えています。 事件の被告人として起訴され、無罪を訴えていたものの、2009年に最高裁で死刑が確定したのが林 眞須美。彼女は獄中から無実を訴え続け

いま、読み直したい書籍『戦争広告代理店』

スマートフォンやSNSなどのテクノロジーによって、一人ひとりがメディアになっている時代では、情報を発信する上でも、受けとる上でも、これまで以上にリテラシーが求められます。 個人や少人数でもやりようによっては、影響力をもたらすことができるという面もありながら、悪用することがないようにしなければなりません。自覚的な悪用でなくとも、結果として加担してしまうことも起こり得る。 たとえば、誰かが仕掛けている意図的に印象を形成しようとしている情報を拡散してしまうこともありえます。特定

クリエイターやアーティストを題材としたドキュメンタリー

2024年10月11日、『ペルソナ3』『ペルソナ4』『ペルソナ5』の制作陣であるディレクターの橋野桂氏、キャラクターデザイナーの副島成記氏、コンポーザーの目黒将司氏らが手掛けたアトラスの新作ゲーム「メタファー:リファンタジオ」が発売されました。 ペルソナは名作ゲームなので、「メタファー:リファンタジオ」への期待も高く、リリース前、体験版、ローンチ後と話題になっています。自分の購入しているのですが、まだなかなかプレイする時間がとれていません…。 なんとかプレイしたいな、と考

日常の人間らしさを記録するドキュメンタリー

普段、テレビ番組を見る機会はあまりないのですが、実家にいるときはリビングで家族が見ている番組を一緒に視聴することがあります。滞在中に『鶴瓶の家族に乾杯』と『ドキュメント72時間』の2つの番組を見る機会がありました。 この2つの雰囲気は異なりますが、とある日常の様子を、できるだけそのまま撮影して番組にしている点が共通しています。最近は、こうしたドキュメンタリー的な映像に面白さを感じることが増えました。 「ドキュメンタリー」とは、もともとは「ドキュメント」が語源で、特定の主題

書籍『メタフィジカルデザイン つくりながら哲学する』

問いとアイデアの総合商社、セオ商事の代表であり、哲学カルチャーマガジン『ニューQ』編集長の瀬尾浩二郎さんの著書『メタフィジカルデザイン つくりながら哲学する』を読みました。 書籍のタイトルにもなっている「メタフィジカルデザイン」とは、ニューQで提唱してきたデザインと哲学を横断する試みのこと。本書では、その概念に至るまでの過程を丁寧に説明されていた印象です。 瀬尾さんは、哲学するための手法として「問い」と「概念工学」の2つを紹介しています。手法の解説に加え、実際にワークを行