マガジンのカバー画像

現代編集論

89
編集の新しい可能性を深化、探索における思索をまとめていきます。
運営しているクリエイター

#メディア

テキストメディアの苦境を乗り越えるために:狭く、深く、質を求める

メディア運営を重ねるなかで、2023年はいろいろと変化がありました。「想いを持ったメディアを持続的なものにしたい」というのが個人のテーマでもあり、簡単に現状と来年に向けての所感をまとめておこうと思います。 今年も閉鎖するメディアがいくつか2022年3月にTechCrunch Japan、エンガジェット日本版が終了するという知らせは界隈では大きな話題となりました。 今年に入ってもいくつかのメディアの運営終了が発表されました。今月では、サイゾーが運営する「wezzy」の更新終

メディアとデザインリサーチの掛け算

2023年5月27日に「SPREAD」をテーマに開催された「RESEARCH Conference 2023」の『デザイン・スルー・メディア』と題したセッションのレポートをinquire.jpに掲載しました。 メディアとリサーチの組み合わせについては以前から可能性を感じており、このセッション内で語られた考え方は共感しました。 メディアを用いることでリサーチに寄与できる部分は多々あると思います。それはアウトプットをつくるプロセスに光をあて、価値に変えるアプローチとも言えます

デザインの可能性を探究する運動体を目指して

今週はインクワイアが運営するメディアのひとつ『designing』からもお知らせが2つありました。ひとつは、オフラインのイベントを開催するというもの。初回はデザインと人類学についてです。 もうひとつは、法人パートナー制度のご案内。“デザインの可能性を探究する”というdesigningのミッションに共感し、共に歩んでくださる企業を募集しています。詳細はこちらからどうぞ。 designingは最近、深澤直人さんのインタビュー記事も掲載して様々な方に読んでいただきました。元々の

メディアと社会をつなぐ朝日新聞の「パブリックエディター」制度

朝日新聞社には、「パブリックエディター(PE)」という制度があり、認定NPO法人カタリバ代表理事の今村久美さん、東京都立大准教授の佐藤信さん、スマートニュース社フェローの藤村厚夫さんが就任したそうです。 メディアが人々や社会の声に耳を傾けず、遠ざかってしまうことがないよう、パブリックエディターが橋渡しを行う。オランダのジャーナリスト、ヨリス・ライエンダイクは「ゼロから学ぶジャーナリズム」の必要性を説いていましたが、それにも通じるものがあります。 ヨリスも設立に関わったオラ

企業における知の編集

インクワイアは、自分たちでメディアをつくって運営する活動と、企業のニーズに合わせてオウンドメディアの設計や立ち上げ、運営伴走を仕事にしています。 メディアは継続して運営し、改善を重ねていくことが重要なのですが、そのためには重要なポイントに集中できるよう、体制やワークフロー、ガイドラインなど、様々な要素の整理が大切になります。 継続のために最も重要なのが、発信するためのネタな尽きないこと。自社の実践からの学びや、手がけたリリースの背景、業界や産業の未来に対する見通しなど、様

インクワイアで編集の可能性を探究する「editorial studies」を始めます

インクワイアにて、広がり続けるメディアや編集の可能性を探究し、その担い手として未来の創造に貢献する。そのためのヒントを探るオンラインイベント「editorial studies」を開催することになりました。 個人や法人のメディア化を筆頭に、メディアを取り巻く環境はここ数年でより大きく変化しています。そのなかで、情報や知識を媒介する「編集」が果たす役割は、一層大きくなっていくはず。 企業の中でも経営、事業、組織への貢献が求められるなど、これまでにないほどメディアや編集の射程

メディアについて相談を受けて考えたこと

今週は会議でメンバーからメディアに関する以下の質問を受けました。一つひとつ取り上げながら、メディアに関する考え方や社会背景、どのような考えをもって運営に臨むと良いかなど、他の質問にもつなげて回答していきました。 ・そもそもメディア、編集とはなにか ・メディアとしての目標の持ち方はどう考えるか ・編集部の目指す姿とはどのようなものか ・編集長と編集部スタッフのそれぞれの役割 ・個々の編集部スタッフは何を学び考えるべきか 本当はこのエントリ内でもそれぞれまとめて記載できるとい

「コミュニティ・アーカイブ」とメディアの役割

今年の3月、せんだいメディアテークの展示「星空と路 —3がつ11にちをわすれないために—」を訪れました。主催は、「3がつ11にちをわすれないためにセンター(略称:わすれン!)」。 東日本大震災による甚大な影響に対し、ともに向き合い考え、復興への長い道のりを歩きだすために立ち上がった同センターでは、市民、専門家、スタッフが協働し、震災とその復旧・復興のプロセスを独自に記録・発信し、寄せられた映像、写真、音声、テキストを「震災の記録・市民協働アーカイブ」として保存しています。

編集における価値創出フローの仮モデル

「事業活動における編集の価値をどう捉え、説明するか」 これは長く事業や組織などビジネス領域における編集者として活動してきて向き合い続けている課題です。 説明しやすいモデルやフローをまとめることは、クライアントなどに価値を伝える際に必要なだけではありません。 新しく編集者やライターとして活動していこうとする人たちに対して、どこにどのような価値があり、それをどう伸ばしていくのかを捉えやすくする目的もあります。 今回は、なんとかまとめて見ている図をシェアします。これが十分だ

メディアを通じたインパクト創出

先日、テクノロジーによる知の出会いで社会課題を解決する次世代メディア「esse-sense」を運営する株式会社エッセンスが資金調達を発表していました。 エッセンスは、既にある未来の可能性を実現するNPO、ミラツクの経営を通じてソーシャルイノベーションの創出にずっと取り組んできた西村さんによる新しい挑戦です。 今回の資金調達において、「ゼブラ経営の社会実装」を進めるZebras and Companyも参加しており、その出資に合わせた対談記事づくりをお手伝いしました。 詳

メディアについてのメンタリングします(募集終了)

※2022/07/31で募集を〆切ました。再度実施する際はお知らせします。 以前、ブログでも投稿したように想いをもったメディアが持続可能な生態系のようなものをつくっていきたいと考えて活動を行っています。 まだまだ道半ばではありますが、少しでも現時点で還元できるものを還元していきたいと考え、Meetyでカジュアル面談を公開しました。 こちらのエントリでも記載したように、コミュニティメディアのような特定多数向けのメディアを志向している方だと、特に相談に乗れると思います。

特定多数向けのメディアと、資産としてのコンテンツ

インクワイアでは、さまざまなメディアに関わっていますが、一貫しているのが「コミュニティメディア」とも言えるサイズだということ。これは会社を創業する前、自分がフリーランスだった頃から変わっていません。 メディアとコミュニティ小林弘人さんは著書『新世紀メディア論』において、メディアビジネスの未来について語るなかで、コミュニティ創出の重要性について触れていました。元々、雑誌やラジオといったメディアはコミュニティとセットで存在していましたが、インターネットの浸透やSNSの普及によっ

音声というメディアで試したい3つのこと

やろうやろうと思いながら、なかなか着手できていなかったPodcastを、最近ようやくはじめました。 5回ほど配信してみて、少しずつ収録の仕方、収録時の話し方、音声編集の方法、配信などにも慣れてきました。 イベントで話したり、インタビューで話したりするのとはまた違いますが、これはなかなか面白いです。 元々、音声メディアをやりたいと考えていた理由は、大きく分けて3つあります。今回は、それぞれについて書いてみます。 テキストでは削られやすい余白や空気を共有したい 生煮えの

起業家を取材するという仕事

inquireはいろんなメディアの運営に携わりますが、コミュニティをベースにしたメディアが多く、フィールドワークをしているような気持ちでコミュニティに溶け込みながら、その中での情報の媒介役を担っています。 媒介役となるために、そのコミュニティについて理解を深めて、同じ言語でコミュニケーションできるように土地勘を形成し、継続して取材をしていって変化を可視化し、共通する文脈を言語化したり、場の編集を通じてつながりを生み出したりと、いろんなことをやってきました。 これは会社化す