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地域の記憶

岐阜県の焼き物で知られるエリアである多治見・土岐・瑞浪を舞台にしたアートプロジェクト「ART in MINO 土から生える2024」に行ってきました。このアートプロジェクトはこれが第二回目。

第一回の「土から生える」展が開催されたのは2008年。第一回では、山から掘り起こされた粘土を精製し、成形・施釉・焼成する焼物産業の分業制各種の場や陶芸作家の陶房を選び出して作品設置を試みたそうです。

当時の展示では、キックオフから打ち上げ宴会の様子まで、写真作家の山田亘さんが記録写真を撮影し、書籍『土から生える 場の力に挑んだ10人』(美術出版社)に収められていました。この書籍が、展示会場のひとつである「ギャルリ百草」に置かれており、書籍に収められなかった当時の写真の展示も行われていました。

プロジェクトの始まりから終わりまで、記録写真を撮影し、アーカイブしたものを書籍や展示などに活かしていくというのは、最近の個人的な関心であるアーカイブと編集の実践に関するヒントも得られそうでした。

ちょっと話がそれましたが、「土から生える」の第二回では、焼物や粘土という窯業の枠に縛られることなく、土まで解釈を広げて数百万年前の歴史から現代までを想像するものにしたいと考えて、各展示が企画されたそうです。展示会場は3つの市にまたがっているので、移動は少し手間かも。

「ART in MINO 土から生える2024」会場マップ

僕は、今回多治見と瑞浪の展示会場を巡りました。印象深かったのは、2021年に閉鎖した瑞浪市民公園にあった地球史に関する博物館「地球回廊」をつかった展示です。

この展示会場は博物館になる前、第二次世界大戦中に、中国と朝鮮から強制連行によって送り込まれた人びとが建設した地下軍需施設でした。正直、今回のアートプロジェクトのテーマより、地元近くの地域に残る戦争の記憶、それも加害の記憶を感じ、それが印象深いものになりました。

展示を見終えてから少し調べてみると、終戦間際、愛知県犬山市、岐阜県瑞浪市、川辺町、八百津町、可児市などのエリアでは、同様に地下軍需施設の建設が行われていたそうです。「地域に残る加害の記憶と贖罪意識」という論文や、地域の高校生がその歴史について調査したという新聞記事も見つけました。こうした情報と出会うきっかけが得られたのは幸いでした。

なかなか、学校や家庭で明確に教わってきた記憶はないのですが、全く聞いたことがなかったというわけではない記憶です。こうした記憶に触れた自分が、どう受け止めて、受け継いでいこうとするのか。これも、関心を持っている別のテーマとのつながりを感じる機会となりました。

途中から、個人的に印象深く感じた話になってしまいましたが、焼物や粘土などに関心のある方は、非常に面白い展示かと思うので、ぜひ足を運んでみてください。







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モリジュンヤ
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