執筆の工程分解と時間見積の考え方
人には過去に計画どおりに進まずに失敗した経験が繰り返し起きても新たな計画を立てる際に楽観的な予測をする「計画錯誤」や、特に根拠がないにもかかわらず大丈夫だと考える「楽観性バイアス」といった認知のバイアスが働きます。
1本の原稿を書き上げるというタスクにおいては、こうしたバイアスが他のタスク以上に働きやすく、作業時間の見積がブレやすいと考えています。作業時間の見積ができなければ、設定された〆切に間に合うかどうかを検討することもできません。
時折、1本の原稿を書くのみであれば、そこまで気にすることではないかもしれません。ですが、コンスタントに複数の原稿を書く仕事をするとなれば、話は変わってきます。作業時間を見積もることができなければ、〆切に間に合わない原稿が続出してしまいかねません。
作業時間の見積精度を上げるために必要なのは、まずステップを分解すること。これは原稿執筆においても同様です。「執筆」という大きなまとまりで工程を捉えるのではなく、まず分解をしてみます。
原稿作業のステップを分解する
例えば、原稿を作成する際のステップを分解して、順番に並べてみると以下のようになります。このあたりのステップは案件によって、もしくは個人によって違いがあると思いますが、大事なのはできるだけ細かく分解すること。
コンテンツの要件を復習する
執筆に必要な素材を用意する
足りない素材の手配を依頼する
構成を作成する
素材を整理する(画像や文字起こし、資料など)
用意した原稿ファイルに構成を貼り付ける
構成に沿って素材を配置する
セクションごとに文章化する
一旦、最後まで文章化する
画像を配置する
上から推敲を行う
タイトルやリード文を作成する
再度推敲する
原稿執筆が、13のステップに分解できました。1や12のステップに関しては別途紹介するエントリを出しているので、よかったら合わせてみてみてください。
分解したステップごとに時間を見積もる
ステップを細かく分解したら、次はステップごとにどの程度の時間がかかるかを見積もってみます。過去に対応したことのある作業であれば、おおよその見積ができると思います。その際、冒頭で紹介したようなバイアスが働く可能性を考慮しておけるとベターです。
それぞれの工程ごとの時間を見積もったら、それを足し合わせてみます。その合計が1本の原稿をまとめるのに想定される必要時間です。大抵の場合、計画は計画通りに進まないので、算出された必要時間に対してバッファを見込んでおきましょう。
見積もった時間を足して〆切までに時間が確保できているかを確認
全体で必要な時間の見積を実施した後は、〆切までの残り時間で、その原稿のために確保できている時間を計算してみます。
確保時間を計算する際は、会議や休憩、移動などの時間を除外すること。日数があるように見えても、予定がいろいろと入っていると作業に使える時間は少なくなります。
休憩がなければ集中して原稿を書くことはできませんし、会議や移動の前後などはすぐに執筆するモードになることも難しいので、この時間をあてにしても、なかなか作業が進みません。
もちろん、睡眠や食事の時間なども除外します。生活のための時間を除外してのスケジューリングは機能したとしても、ごくごく短期的なものになってしまいます。
確保時間が見積時間より少ない場合、すでに間に合わないプランになってしまっています。これになんとか間に合わせようとすると、無理が生じます。確保時間が見積時間より多くなるようにスケジュールの相談をします。
スケジュールの相談はできるだけ早めに実施すると調整にかかるコストが低減します。早めに作業時間を見積もってみて、相談が必要な場合は早めに相談できるようにしましょう。
分解して進めることで心理的ハードルを下げる
作業工程の分解は、時間の見積の他にも効果を発揮します。執筆を進める上では、作業に対する書き手の心理的ハードルを下げるというのも非常に大切です。
ステップを大きく「執筆」だけとして捉えていると、進捗を生み出した実感を持ちづらくなってしまいます。ステップを細かく分解していくと、1つひとつのステップごとに進められるので、進捗をつくりやすくなります。
13のステップを一気に進めようとするとハードルが上がりますし、まとまった時間がないとなかなか着手すらできません。ステップを細かくしておけば、スケジュールの間で時間があるときに、2〜3のステップ分進める、といった対応もやりやすくなります。
進捗が生まれると続きを進めるハードルも下がり、残りどの程度の時間が必要になりそうかの見積の解像度も上がっていきます。
今回は執筆の工程分解と時間見積の考え方についてまとめてみました。なかなか思うように原稿執筆が進まない人は、参考にしてみてください。
最近まとめた案件ポートフォリオの管理についても合わせてどうぞ。