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プロジェッタツィオーネに学ぶ、「控えめな創造力」

東京ミッドタウン・デザインハブで開催されていた『PROGETTAZIONE (プロジェッタツィオーネ) イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力』に行ってきました。

展示タイトルにもなっている「プロジェッタツィオーネ(Progettazione)」とは、イタリア語で「プロジェクトを考えて、実践すること」を意味する言葉。「Design」という用語が一般的でなかった第二次大戦後のイタリアでは、プロジェッタツィオーネがデザイン哲学。

プロジェッタツィオーネは、社会性のある創造と市民全般への教育を使命とする倫理性に富んだものだったそうです。現代の消費主義社会における企業の利益を追求するためのデザインに対して別の可能性を提示する展示内容でした。

プロジェッタツィオーネに関するイベントにも参加してみたのですが、そこで紹介されていたプロジェッタツィオーネの特徴は、ティム・インゴルドが著書『Making』の中でつかっていた「控えめな創造力」と言えるのだとか。押し付ける創造力ではなく、世界の人間や物質との対話をし、その手応えを踏まえてなにかが生まれる、そんな創造のプロセスを良しとしています。

そのため、展示内容もアウトプットだけを見て近年のデザインとの違いを強く感じるのは難しかったかもしれません。ただ、プロセスやその前提となる姿勢に関しての言及は示唆に富んだものでした。例えば、インクワイアが運営するデザインメディア「designing」でも紹介した「まほうのだがしやチロル堂」についての展示もありました。

展示は日本においても萌芽が見られる動きをプロジェッタツィオーネとして紹介していました。こうした哲学に共感する日本のプロジェクトは他にもまだまだありそうですし、これから増えていくでしょうね。

こちらのnoteでもまとめたように、プロジェクトを編集するという行為に対する関心が高く、探索を続けています。一人ひとりがプロジェクトを編集して社会に対して問いかけを行う状態を目指そうとした際に、プロジェッタツィオーネから学ぶことは多々ありそうです。

それにしても、「プロジェクト」という概念の捉え方は本当に多角的で非常に面白いですね。サービスデザインとサステナブルデザインの世界的リーダーであるエツィオ・マンズィーニは、『日々の政治』のなかでライフプロジェクトやプロジェクト中心の民主主義について言及していました。

「プロジェクト」は生活であり、政治であり、学習であり、なにかを生み出す活動と言えます。実にさまざまな可能性が内包されている。プロジェクトについては引き続き探索しながら、いろいろと実践を重ねてみたいと思います。プロジェクトエディットやプロジェクトインキュベーションの考え方や方法論の整理を行っていきたいと思います。

まずは、近く発売になるプロジェッタツィオーネの書籍を読むところから。


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