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メディアの継続と継承

「人に変化を、世界に想像力を」をミッションに掲げるメディアカンパニーCINRA, Inc.が代表を交代し、株式を株式会社WOWOWコミュニケーションズに譲渡することが発表されました。同社の次の挑戦を心から応援します。

CINRAさんとは規模は大いに違えど、自分もメディアを運営する人間として、メディアやクリエイティブを生業とする会社を経営する人間として、今回のニュースはいろいろと考えることがありました。

メディアは継続することで価値が生まれますが、継続させることは非常に困難です。メディアを立ち上げることは比較的容易なため、これまでにたくさんのメディアが生まれ、終了していきました。情報環境も変わり続けるなかで、20年にわたってメディアを継続してきたCINRAさんには尊敬の念を禁じ得ません。

一方で、20年よりもさらに長くメディアを続けていくことを考えると、どのように継承をしていくかが脳裏に浮かびます。創業者や創刊者も年齢を重ねていくなかで、さらに20年、30年と一線で活動するのも困難です。自分に置き換えて設立から20年が経つ頃を想像してみても、なんらかの形で継承を考えなければならないのだろうなと。

持続的に運営する体制を維持すること、継承をすること。そうしたことを考えた際に、選択肢のひとつとして今回のCINRAさんのような意思決定が起こるのだと思います。

少し昔を振り返ると、10年ほど前には、「ナタリー」がKDDIに買収されました。独立した状態でメディアの運営を続けていくのは難しいこと。もちろん、どこかの子会社になることが悪いわけではありません。

それでも、自分はしばらく「インディペンデントなメディア」というテーマに取り組んでみたいと考えています。そう考える背景には、インディペンデントなメディアが社会に充実していることと、マルチカルチュラリティの関係があります。少しテーマは変わりますが、以下のDISTANCEの記事が参考になります。

コーヒーブレイクをはさんで最後にサラエヴォの『ダニ』紙編集長セナード・ペカニンが「サラエヴォのメディア状況の現在と未来」という発表を行ない,ボスニア政府や様々な勢力によって,特定の党や利害に関連しないメディアには重大な技術的,経済的困難が課せられている現状を訴えた.

ディスカッションでは「なぜインディペンデント・メディアか?」という問いが繰り返し問題にされ,誰からともなく「インディペンデントなメディアなしにはマルチカルチュラリティはありえない」というラディカルな提起が生まれた.


この後も議論は錯綜したが,民族主義をプロパガンダするセルビアやクロアチアの政府はもとより,ボスニアの政府でさえ民族的マイノリティの情報を管理し,問題のイデオロギー化をはかっている状況下では,市民の手による多様な「インディペンデント・メディア」こそがデモクラシーのための最低の条件であるだろうという点で一致が見いだされた.

インディペンデントなメディアなしには マルチカルチュラリティはありえない

「メディアと戦争」会議レポート

インディペンデント・メディアの持続的な運営が可能な状態が実現していることと、マルチカルチュラリティの実現に通ずる話については、2年ほど前に書いたこちらのnoteでも言及していました。

経済的に成立しなければ、メディアを継続することもできません。現在は経済的に成立しやすい一部のジャンルのメディアは成長していますが、そうではないメディアは非常に苦戦しています。多様なテーマのメディアが存在しなければ、社会に流通する価値観が非常に偏ったものになってしまうのではないか、ということを危惧しています。

このテーマについてのヒントや手応えが得られているというわけではありませんが、自分にとっての探究テーマとして引き続き実践を重ねていきたいと思います。

メディアの継続や継承ということについて、ふらふらとあちこちに寄りながら文章にしてきましたが、少し前にあった希望のあるニュースとして、「デイリーポータルZ」の独立がありました。一度は、大手企業の傘下となっていた同メディアが、改めて独立し、今後どのように活動していくのかは、チェクしていきたいと思います。


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