テキストメディアの苦境を乗り越えるために:狭く、深く、質を求める
メディア運営を重ねるなかで、2023年はいろいろと変化がありました。「想いを持ったメディアを持続的なものにしたい」というのが個人のテーマでもあり、簡単に現状と来年に向けての所感をまとめておこうと思います。
今年も閉鎖するメディアがいくつか
2022年3月にTechCrunch Japan、エンガジェット日本版が終了するという知らせは界隈では大きな話題となりました。
今年に入ってもいくつかのメディアの運営終了が発表されました。今月では、サイゾーが運営する「wezzy」の更新終了と閉鎖が発表されてましたね。
こうした出版社が運営するウェブメディアだけでなく、インディペンデントなスモールメディアも運営には苦慮しています。
一方、デイリーポータルZが独立して運営を続けるというのはポジティブなニュースではありました。
とはいえ、事業会社の中でメディアの運営を続けるということの難しさを感じるニュースでもあり、喜んでばかりもいられません。
メディアが置かれている厳しい環境
元々、メディアビジネスを成立させることのハードルは高かったですが、今年に入っていろいろと情報環境が変化したことも影響を与えているように感じられます。
ここ10年ほどはSNSが成長したことで流入を獲得する主な手段となっていましたが、各プラットフォームがユーザーの滞在時間を伸ばそうという動きを強めたこともあり、流入の獲得が厳しくなっています。流入獲得が厳しくなれば、広告の売上も下がります。
DIGIDAYのこちらの記事を読んでいると、メディアビジネスの可能性として期待されていたサブスクリプションやコマースといった手段が、広告を補うほどの規模にならないことも結果として出始めているようです(これは特に規模の大きなメディアに関することだとは思いますが)。
流入の確保が難しく、広告が厳しく、その他の手段による補填も難しいとなれば、置かれている状況はかなりシビアなもの。
テキストメディアに関しては、さらに他のコンテンツとの食い合いも大きな要素。映像や音声などのコンテンツが盛り上がり、人々の可処分時間の奪い合いが激しくなったことも影響していると考えられます。
テキストは能動的に読む姿勢が必要ですが、映像や音声はある程度受動的に体験できるコンテンツということもあり、テキストを読んでもらうハードルも上がっています。
狭く、深く、質を高める
こうした流れの中で、「クオリティメディア」にしていこうという動きもあります。コンテンツ価値の訴求と広告価値を追求し、広告の品質を高めていこうという動き。
DIGIDAYの記事の中では、Axiosなどのメディアを例に出し、リソースを狭く深い領域にフォーカスした「ニッチメディアモデル」は成功事例とされているという記述もあります。
自分が手掛けていきたいのは、こうしたニッチメディアモデルやクオリティメディアと呼ぶようなもの。運営するメディアごとに狭く、深く入り込むドメインを決めて、そこでクオリティの高いコンテンツを届けていく。
テキストメディアとしての挑戦も重ねつつ、動画や音声といったコンテンツの可能性も模索して、この環境下をサバイブしていけるように、来年は自社のメディア実践に取り組んでいきたいと思います。
今回はパブリッシャーとしてのメディアについての所感をまとめてみました。企業におけるメディア運営に関しては共通する点と、異なる点があるため、別エントリにてまとめようと思います。