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自立共生のための建築─『ふたしかさを生きる道具』

友人たちが主宰する建築設計事務所「ツバメアーキテクツ」の10年の活動をまとめた書籍『ふたしかさを生きる道具』をご恵投いただきました。

下北沢でのボーナストラックをはじめ、様々な建築プロジェクトを手掛けてきたツバメアーキテクツの背景にある思索に触れられる内容でした。

「建築」は面白いものです。手掛けた建築家がどのような思想を持ち、どのような過程でそれをつくり、建築されたあとにどのような営みが生み出されているのかを感じられるから。パッと見たときのユニークさなども興味深いのですが、その背景や立ち現れる営みにこそ、面白さがあります。

『ふたしかさを生きる道具』でも、過去の建築プロジェクトにおいて、どのような問題意識を持って取り組んできたのか、どのような狙いを込めて作り出したのかが語られています。

頻繁に引用されていたのがイヴァン・イリイチの「コンヴィヴィアリティのための道具」の話。イリイチは、「コンヴィヴィアリティ」を自立した存在が共に生きる中で生まれる生き生きとした情動や喜びを意味する言葉として使っています。現代の建築が、人のふるまいを規定し、自由を奪ってしまっているのではないか、そうならないようにするにはどうするのか。そんな問題意識がこの本には込められています。

産業主義が進展していくなかで、様々な場面で収益性や効率性が重視され、管理面や確実性が求められる。それは建築も同様です。そうならず、いかに地域社会と結びついた、個性ある建築を作り出していくのか。その姿勢に共感すると共に、建築以外の活動においても学ぶ点が多々あると感じました。

他にも多々言及したい点はあるのですが、長くなりそうなのでこのあたりで。少しでも気になった人はぜひ、書籍を読んでみてください。

サポートいただけたらその分、執筆活動等に充当させていただきます!