「ソーシャル・イントラプレナー」、社会課題の解決を社内起業家の存在
社内で新規事業を生み出すイントラプレナー(社内起業家)の存在は様々な企業で求められるようになっています。
ソーシャルスタートアップや、インパクト投資、SDGsなど事業成長だけでなく、社会課題の解決も求められるようになっているなか、イントラプレナーのあり方も変わろうとしているようです。
書籍『ソーシャル・イントラプレナー』で紹介されているのは、その名の通り社会課題の解決と事業成長の両立を目指す社内起業家に必要な考え方や実践例でした。
ソーシャル・イントラプレナーの登場
同書の著者たちは、世界で影響力あるさまざまな組織の中から、社会変革や環境活動に取り組んでいるイントラプレナーたちのグローバルな学習コミュニティ「リーグ・オブ・イントラプレナーズ」のメンバー。
ソーシャル・イントラプレナーについては、冒頭で次のように述べられています。
ソーシャル・イントラプレナーに求められる要素
同書では、U理論やシステム思考、セオリーオブチェンジなど、様々な理論を引用しながら、ソーシャルイントラプレナーに求められるスキルや知識について紹介されていました。
個人的に興味深かったのは、ディープリスニングや高次の問いの設定、組織における優位な物語の分析と再構築、再構築の際に受けての世界観に配慮するための道徳基盤などの手法が紹介されていた点。
ソーシャル・コンサルティング・ファームのFSGは「The Water of Systems Change(システム変革の水)」という論文の中で、複雑なシステムや組織を固定化している6つの要因を挙げているそうです。
方針:政府や機関・組織のルールや規制・優先順位など、あらゆる団体に存在する行動規
実践:公的な機関、業界団体などが取り組んでいる通常の活動プロセス。またその組織内の活動を形成している手順やガイドライン、非公式に共有されている習慣も含まれる
リソースの流れ:お金や人・知識・情報およびインフラなどの資源の分配
関係性:システムに関わる関係者間、特に異なる経験や視点を持つ者同士のコミュニケーションや関係性の質
力関係:個人や組織の意思決定権や職権、および公式と非公式の影響力の分布状況
メンタルモデル:物事の見方や言動に影響を与える固定観念や、当たり前とされている手法などに見られるような思考の癖
取り組む課題を見定めたら、仲間を集めるために物語をつくります。現在の組織における優位な物語を分析し、それを踏まえて新しい物語を構成する。物語の分析については、アメリカのシンクタンクで、ストーリーベース戦略センター(Center for Story Based Strategies)の手法を参考に、以下のように記されています。
物語を再構築する上では、受け手の世界観も想像し、社会心理学者グループが作成した「道徳基盤理論」を参考に、物語の構成を考えるといいます。世界観や文化はさまざまですが、以下のような普遍的な構成要素があるそうです。
ケア / 危害
公正さ / 欺瞞
忠誠 / 背信
権威 / 転覆
神聖 / 汚れ
これらの考え方は、事業を生み出す上での知識としてだけでなく、編集を生業としている自分としても興味深いものでした。
従来のイントラプレナー以上に念頭におくべきことが多く、負担も大きいであろうソーシャル・イントラプレナーという存在。イノベーションのカタリストとして伴走できるよう、自分自身もインプットや実践を重ねていきたいと思います。