感謝が回る仕組み「地域通貨」との出会い--KOU Story vol.3
『KOU』プロダクトオーナーの中村 真広さんに話を伺いつつ、サービスのストーリーを伝えていく「KOU Story」。
前回は、スタートアップにおいて資本主義を乗りこなすという挑戦をしながら、急成長の中でバランスを見失った経験から、新たな価値のモノサシを探し始めたエピソードを紹介しました。
今回は、中村さんが模索の中で出会った「地域通貨」にフォーカスして話を伺っていきます。
目次
・「お金」の価値を捉え直す
・助け合いを可視化する「地域通貨」
・地域通貨をデジタルに解釈する
「お金」の価値を捉え直す
--地域通貨をテーマにした講座に通って、どんなことを学んだのでしょうか。
通った講座は「コミュニティ経済と地域通貨、そして未来のお金クラス」というものでした。講座で、貨幣の基本的な4つの機能について学び直したりしながらも、地域通貨をベースに事例を学びました。
地域通貨とは法定通貨とは異なる通貨。地域のコミュニティ内で価値があるものとして使用されるもので、英語では「community currency」や「local money」とも呼ばれます。地域通貨について知識を深めながら、地域の経済圏を回す上で人とのつながりがどれだけ大事かがわかっていきました。
藤野という地域通貨を取り入れている地域にも足を運び、法定通貨ももちろん使っているんだけど、サブシステムとして地域通貨が活用されている現場に触れて、その可能性に惹かれました。
助け合いを可視化する地域通貨
--地域通貨のどのあたりに惹かれたのでしょうか。
藤野では、「お互い様の経済をつくろう」を合言葉に「萬(よろづ)」という地域通貨を導入しています。よろづの仕組みは、各自の取引の履歴がわかる通帳をもっていて、自分が助けてもらったり助けてあげたりするごとに、プラスマイナスを記載するんです。
すると、地域の中でどれくらい自分が助けてもらっているか、はたまた助けているかが可視化される。金銭的なやりとりは発生していないんだけど、感謝が循環しているというのが素敵だなぁと。
--それは素敵ですね。地域通貨ではありますが、国分寺で使われている地域通貨「ぶんじ」のような商店街の中でお金的に使えるものとは異なるんですね。
そうですね。地域通貨にもいくつか種類があります。僕はよろづの助け合いを可視化する台帳タイプが面白いなと。
たとえば、僕が何か面白い映画を探していて、映画好きな人におすすめを教えてもらったとします。これって、通常の経済活動の中では価値が見えにくかったことなんですよね。
--たしかに、金銭的なやりとりをするわけでもないですしね。
でも、僕はおすすめしてもらって感謝するし、おすすめしてくれた映画好きな人は自分の好きで相手に貢献できた状態。
手帳に記すときにはマイナスかプラスかで表現されるけれど、お互いに気持ち良いポジティブなやり取りが生まれるんです。
地域通貨をデジタルに解釈する
--地域通貨について学んだ後はどうされたんですか?
講座の最後に、学んだ上で自分が何をするのかを発表するマイアクションを共有する時間がありました。講座の終盤では「これはサービスにできるかも」と考えるようになっていたので、そのプランを発表しました。「KOU」のアイデアの原点ですね。
ちょうど、その頃は新しいco-baの展開を考えていたときで、チームのメンバーとコミュニティを強化するような仕組みを取り入れたいよね、という話をしていたんです。そのときのアイデアで、仮想通貨を活用してトークンを発行する、というものもありました。
僕は藤野でよろづの事例を見て、コミュニティのつながりを深めるのが目的だったら、そこまでやらなくてもいいんじゃないか、と考えるようになったんです。ただ、コミュニティの中での助け合いを増やしたい。
--貨幣経済の活動にはのってこないやりとりをコミュニティに増やすためのサービスを作れないか、と考えたんですね。
そうなんです。近しい人が困っていて、ちょっとした助けを差し伸べる。それは、別にお金がほしいわけじゃなくて。人間関係の上に乗っかる、貨幣経済じゃない取引を可視化するツールを作れたらな、と考えて。
それで、地域通貨をデジタルに解釈したい、という発表をしたと佐藤さんにも伝えました。そしたら、一緒にやろうという話になって、その後は一気にリリースに向けて開発をスタートしたんです。
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KOUがどのように生まれ、この先何を目指すのかを今後複数回に渡って紹介していきます。
(次回予告)「テクノロジーでバランスを取り戻す」
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