コミュニティと会社
「コミュニティ」という言葉を耳にする機会が増えています。ビジネスシーンでも、「コミュニティの重要性」が語られる場面は多く見られます。
本来、コミュニティとは、特定の地域(村、町、地方など)で、共通の風習や伝統、言葉づかいなどによって形成される共同生活の領域を指します。しかし、実際には「本来はアソシエーションと呼ぶべきでは?」と思われるものも、コミュニティと呼ばれていることがしばしばあります。
アメリカの社会学者マッキーバーは、社会集団を類型化し、アソシエーションをコミュニティの対概念として位置づけました。アソシエーションは、協会、組合、社団、結社などと訳され、共通の利益や関心を追求し、特定の目的を達成するために形成される組織体を指します。
このような集団の分類としては、ドイツの社会学者テンニースの「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」の概念もあります。テンニースは、「本質的な意志に基づき、外見的には分離があっても、根本的な結びつきが維持される人々の関係」をゲマインシャフトとし、「利害や計算に基づいて形成される、企業や大都市、国家などの集団」をゲゼルシャフトと分類しました。
現在、「コミュニティ」と呼ばれている集団の中には、実際にはアソシエーション的、またはゲゼルシャフト的なものが多く含まれていると考えられます。かつての「コミュニティ」とされていた集団は、地縁や血縁、社縁などの解体が進んでおり、今ではそのような集団からも離脱しやすくなっているように感じられます。この変化には、良い面もあれば、そうでない面もあります。
個人的には、人々が自分の居場所を自由に選択できるようになり、身軽になっていくことは歓迎すべきことだと考えています。ただ一方で、人とのつながりを築き、維持することがますます難しくなっているようにも感じます。そうなれば、なにかあったときに助けてもらうことも難しくなってしまう。別の形で、新たなつながりを紡いでいかなければならないのではないかと。
小さな集団である会社を運営する立場として、こうした課題意識や集団の類型を踏まえながら、現代のニーズに合った人のつながりを生む場として、会社の在り方をどのように捉えていけばいいのかを考えています。かつての社縁とは異なる形で、つながりをどう紡いでいくか。それを考えていくうえで、参考になりそうな情報もいろいろとあります。
たとえば、ドイツの経営経済学者ギド・フィッシャーが提唱した共同体思想を基調に置いた「パートナーシャフト経営」という考え方があります。この考え方では、企業を経営共同体として把握し、企業活動を構成員が生み出し,その構成員に配分されるべき成果を中心に把握しようとする共同体論を基礎に置いているそうです。
これがそのまま参考になるというわけではありませんが、以前から研究されているような知識も踏まえて、現代の環境にフィットし、自分たちの価値観に合う形でどのようにアレンジしていけるかに取り組んでいきたいですね。