技術進歩による広がるデジタルデバイドと、橋渡しするコミュニケーター的存在
AppleからiPhone 16が発売されました。近年は新型のiPhoneになっても、大きく驚くことはなくなってきましたが、今回のiPhoneに搭載された、Apple独自のAI「Apple Intelligence」は気になりますね。
体感する度合いの違いはあれどスマートフォンの進化を感じる一方で、実家では母のiPhoneの機種変更をサポートするという出来事がありました。iPhoneからiPhoneへの変更はかなり便利になりましたが、それでもわからない人にはわからない。どんどん変わっていくスマートフォンを使いこなせないという人は、きっと大勢いるのだと思います。
他には、最近Webに詳しくない昔からの知人に、「Webサイトをつくりたいけれど、どうしたらいいだろうか」と相談を受けました。最近では、ノーコードやローコードなどのサービスも増えているので、目的にもよるもののWebサイトをつくる際の選択肢は増えています。ただ、これも知らなければ検討することもできません。
ハードウェアもソフトウェアも、どんどん進歩して便利になっているという実感があります。ただ、こうしたテクノロジーの進歩をキャッチアップして、便利さを享受できている人が同じように増えているかというと、そうではないのではと感じてもいます。
技術的な資源(インターネット接続、コンピュータ、スマートフォンなど)へのアクセスの差がある際、「デジタルデバイド(デジタル格差)」と呼ばれる技術の恩恵を享受できる人々と、そうでない人々との間に生じる格差が生じるとされます。
技術的な資源へのアクセスには差がなかったとしても、それらを使いこなせるかどうかという点でもデジタルデバイドが生じる可能性があるのではないかと考えています。すべての人がアクセスできるようにしつつ、使いこなせるようにするためのサポートも必要なのではないか、と。
テクノロジーは、適切に活用していくことができれば、人の能力を拡張してくれて、今までにできなかったことが実現できるようになるもの。テクノロジーが進歩すれば、それだけ人の可能性をひらくことにもつながるはず。ただ、進歩についていける人が少なければ、格差が広がってしまいます。
こうした問題を解決するために、社会全体での仕組み化や包括的な取り組みも求められますが、小さな取り組みで解消できることもあるのではないかと考えているんです。利用者のニーズに合わせて、技術資源の適切な使い方や組み合わせ方を伝えていくような「翻訳者」のような役割をつくれたら、価値が生まれるのではないかと。こうしたことも編集的な営みのように思うのです。
科学技術とどう付き合い未来をどう築いていくのか、社会のさまざまな立場の人と対話をしながら考えていく役割を担う方々は「科学技術コミュニケーター」とされます。こうした取り組みから学びながら、より日常的でより実用的な橋渡しを社会に実装するにはどうしたらいいのか。関心あるテーマのひとつです。