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ニュースへの接し方が変わる、そんな書き方を発明したい

「THE BRIDGE」でテック系スタートアップの取材をしていたとき、どうしたらニュースで他のメディアと違いを生み出すことができるのかを考えていた。

スタートアップのニュースは取り上げる媒体が少ないとは言え、媒体は存在する。ファクトベースで記事を作るとなると、どうしてもスピード勝負な側面が出てきてしまう。

速度以外で違いを生み出すことはできないのか。この2、3年はずっとこの問いについて考えてきた。

ニュースや報道のあり方における変化はこれまでにも度々触れてきている。速度重視ではないスロージャーナリズムや、仮説や考えを開示しながら発信するプロセスジャーナリズム、問題のみならず解決策も合わせて伝えるソリューションジャーナリズムなど、新しい言葉が色々と生まれてきている。

これらは、ニュースという事象に向き合うマインドセットだ。soarやUNLEASHなど、運営しているメディアではこのマインドセットは大切にしたい。マインドセット以外に、開発しなければならないのが書き方、記事フォーマットのアップデートだ。

書き手が「これは良い情報だ」と思って書いたとしても、必ずしも読み手がそう受け取ってくれるわけではない。特に、近年は社会の変化は激しいし、新しいモノやコトがどんどん生まれるし、1つの事象を理解するための前提知識が必要なことも多い。

ニュースの記事は基本的にファクトベースで簡潔に書かれてきた。だが、それでは情報発信が点になりやすく、点で紹介するだけではどうしても前提となる知識や関心が必要になってしまう。どうすれば、関心を持ってもらい、知識が足りない中でも読んでもらえるのか。コンテンツの再発明が必要だ。

コンテンツの再発明をした例といえば、東京R不動産や日本仕事百貨だ。不動産情報や求人情報というファクトベースだったコンテンツに、ストーリーやエモーショナルさ、個人の好みを上乗せすることで人が楽しんで読みにくるものになった。

ニュースも、同様の変化が生めるんじゃないか。そう考えた僕は、『UNLEASH』や『AMP』など編集するメディアのニュース記事で実験を始めた。社会で起きている色々な出来事に関心を持ってもらうために、書き手個人の体験に引きつけて紹介したり、コンテキストを整理して文中で触れるようにしていった。

書き手のエピソードや感じたことを記事中に入れながらニュースを書いていくことで、読み手にとってニュースが読みやすくなったり、自分ごとにしやすくなるなと思ったのだ。

IDENTITYでも活躍している中川 明日香を始め、感性豊かなライター陣が意を汲んでくれ、素敵な記事を書いてくれている。

トライを始めてしばらくが経ち、記事に反応する声が届くようになってきた。先述の彼女の記事ならニュース記であっても読めるという声が。

何といってもその素晴らしいリード文で読み手をグッと惹き込み、離さない。まるで自分がそのニュースの登場人物になった気持ちにさせてくれる。リード文で一気に没入させ、気づいたときにはもう記事の中盤(=ニュース本体の入り口部分)に到達している。そして、「もう少し読んでみようかな」と進んでいくと、わかりやすい説明でリード文の"伏線回収"がされる。

これからの情報発信の主体に必要なのは、「この人の記事なら読もう」と思ってもらえるような信頼を獲得し、自分ごと化してもらえるような発信をすることではないだろうか。

こうした記事を作成するプロセスを不完全でも良いから言語化してみるとするなら、物事を抽象的に捉えたり、要素を因数分解した上で、共通項を見つける。そして、メタファーなどを用いて、書き手自らのエピソードに引きつけて語る。

社会構成主義におけるナラティヴ・アプローチ的な考え方を取り入れることで、再現性のあるコンテンツのフォーマットになるのではないか、と今は考えている。

※追記

上記アプローチは広告記事に見えやすいのでは、プレスリリースなどは向いているかもしれないが、報道の記事では成立しないといったご意見もいただいています。ご指摘の通り、適用できるケースとそうでないケースもあるので、そこも含めて考えていきたいと思います。

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UNLEASHは駆け出しのメディアだからこそ、新しいアプローチを色々と実験していきたいと考えています。一緒にチャレンジしてみたい、という人は下記のページをチェックいただけるとうれしいです!

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