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2025年に向けて、すべての人の人権とウェルビーイングのための活動へと進化する #soar応援

soarが立ち上がりから5周年を迎えました。

非営利メディアを運営するNPO法人はみなさんからのご支援なくしては成立しないので、継続して運営できているのは本当に多くの方々に支えていただいているおかげです。

2015年12月、自宅のリビングでたった2人で立ち上げた活動も、いまでは数多くの人と関わりながら営んでいくものになりました。

毎年、12月にはsoarの1年を振り返ってコラムを書いているのですが、昨年のことも思い出しながら、これまでを振り返りつつ、この先の5年のことを考えてみたいと思います。

soarのなんでも屋として過ごした5年

まず、僕のsoarでの役割から。「副代表」という肩書がついていますが、簡単に言ってしまえば、soarが目指すビジョンの実現に近づくために必要なことをやる、なんでも屋です。

編集部の体制づくりや、サイトなど技術面の対応、マーケティング、組織づくり、ファンドレイジング、イベントのモデレーターやインタビュアー、コンセプトワークやコピーライティング、トラブル対応、代表の言いたいことの翻訳。ときには記事を書いたり、撮影したり(最近はないですが)、etc。

他の理事のメンバーや、スタッフとも分担しつつも、人手が足りないところに入って、なんとかして任せられそうになったら任せる、そんな動きを繰り返してきました。

最近、もっぱら時間を割いているのが、ミッションやクレド、ロジックモデルなどの作成、活動の位置付け整理です。soarが目指すビジョンのために、どんな活動をどう実践していくのかの整理。

なぜ、今それを行っているのかというと、立ち上げてからの5年でいろんな変化が生じたからです。

2015年、どんな未来を描いていたのか?

前提として、僕はメディアが果たすべき役割は、希望ある未来を人々がイメージできるように、すでに生まれている兆しを集めて束ねることだと考えています。

非営利メディアであるなら、描くべき未来のなかでも経済が成立しにくい、もしくは経済性を持ち込むと本質的な活動からズレにくい領域において、少しでも多くの人と未来のイメージを共有していくこと。

では、soarを立ち上げた2015年12月に描いていた未来はどのようなものだったのか。当時、起きていた出来事をいくつかピックアップして振り返ってみたいと思います。

まず、2013年に東京オリンピックの開催が決定しました。2012年のロンドンオリンピックのテーマは、Diversity(多様性)とSocial Inclusion(社会的包括性)。選手村に誰でも使えるジェンダーニュートラルな施設が作られ、性的少数者のアスリートを支援する環境が整えられるなどの配慮がなされました。

ロンドンとリオのオリンピックをきっかけに、同性婚合法化の動きが勢いづき、イングランドとウェールズ、ブラジル、スコットランドなどで同性婚が合法化していきました。

こうした流れに呼応するかのように、2014年にはAppleのCEOであるティム・クック氏は自身が同性愛者であることをカミングアウトします。アメリカの西海岸を起点に、LGBTQに対する活動が盛り上がり、注目度がさらに向上しました。

2014年1月には日本が障害者権利条約を批准して、2016年4月から障害者差別解消法が施行されることが決定。同法によって、企業に「合理的配慮」への努力目標が課せられることが決まっていました。合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。

こうした兆しから、2020年に向かって日本でも社会的にマイノリティとされてきた方々が生きやすくなるよう、さまざまなことが整備されていく流れが生まれていくはずだ、と考えました。より多くの人たちが、より生きやすい社会へと向かう兆しがある一方で、課題もありました。

それぞれのコミュニティやテーマは別のものとして、距離があるように感じられたこと。当事者とそうでない人の間に見えない線があること。当事者の方々を伝える言葉が大変さを伝えるものが多いこと。当事者を支援しようと活動している方々はいるものの、その学びが横でシェアされていないこと。

縦横無尽につながっていないものをつなげていって、人の可能性に光を当てる。そうすることで、人々がよりよい未来をイメージできるようになれば、少しでも社会は前進していくはず。そう考えて「人の可能性に光を当てる」ためにsoarを立ち上げました。

(soarの立ち上げ背景はこちらの記事でまとめていただいているので気になる方はこちらもどうぞ)

変わり続け、本質を見つめ直す

5年も経過すると、社会は変わります。新型コロナウイルスもありましたし、オリンピックもありませんでした。ブリクジットも起きていなかったし、世界で「分断」がここまで問題視はされていませんでした(書き出すときりがないのでほどほどに...)。

変化はネガティブなものばかりではなく、2015年と比較すると社会的にマイノリティとされる方々についての発信は増えてきたように思います。まだまだやるべきことはあると思いつつ、2015年に描いていた未来は少しずつ実現されていると感じます。

社会が変化すると、自分たちも変化します。ティール組織の「進化する目的」ではないですが、目的は進化する。いや、解像度が高まるという表現のほうが適切かもしれません。また、登場人物が増えると、相対的な役割も変わっていきます。

実際に、soarの内部でかわされる議論や対話のテーマも、この1年で変化してきました。質が変わったというより、幅が広がった、多層的になったと思います。例えば、「回復」についての話が多かったのが、「葛藤」について話す時間が増えた、など。

変わりつつある実態に合わせて、自分たちのあり方を捉え直す必要があるのではないか。そう考えたため、ミッションやクレド、ロジックモデルなどの作成、活動の位置付け整理に取り組んでいます。

社会に手触りと人間性を取り戻すために複雑さに向き合う

では、2020年をどう捉え、改めて5年先の未来を描くとしたらどうなるのか。「今」を眺めてみると、いろんな光景が目に付きます。

楽観的だったテクノロジーがもたらす可能性には疑問符がつき、多すぎる情報はノイズになり、人々の感情を刺激する出来事や言動を起点に起きた炎上は延焼しやすくなりました。2020年6月にはパワハラ防止法が施行され、企業はハラスメントの防止に取り組む必要が出てきてます。

こうした事象は何かしらのフィルターがかかって、相手を「人」として見ることができていない、もしくは「人」として接する上での難しさが表出した結果なのではないかと考えています。こうした背景と関係があるかは定かではありませんが、ビジネスの側面でも顧客や従業員に「人」として向き合うことの重要性が語られるようになってきました。

仕事、生活、趣味など、さまざまな場面で、手触りや人間性を自分たちの手に取り戻していく。言葉にすると当たり前のようにも聞こえますが、この当たり前のことが損なわれてきた。または、学んでこれなかったのではないか?と考えています。

社会に人間性を取り戻していこうとすると、既存の社会に染み付いた仕組みや構造、常識等がその障壁になります。それを取り除いていくこと、新しいOSやアプリケーションをインストールしていくことが重要になるはず。

リブセンスさん、ミミクリデザインさんと協業して実施している「“常識”を考え直すワークショップ」は、そうしたアプローチのひとつです。

人は、これまでの社会で学んできたことをアンラーニングしていかないといけない。その上で、「人」に向き合うためのスキルやマインドを新たに学んでいくことが必要です。

人に、人として向き合うとは、その複雑さや葛藤にも向き合い、受容するということでもあります。こうした、面倒でありながらも、大事なことの知を共有する場がこれまでは非常に限定されていきました。

ただ、知が存在しないわけではなく、NVCやACT、CBT(認知行動療法)をはじめ、さまざまな知がすでに存在しています。また、名前がついていなかったとしても、大切な考え方や向き合い方も社会にはある。

これらはsoarが向き合っていかなくてはならないと考えている、「名前のつかない生きづらさ」を解消するための一助となり、人のウェルビーイングを向上させてくれるはず。そう考えています。

ボトムアップでの「人間開発」へのアプローチ

soarは、ずっと「誰もが自分の持つ可能性を活かして、生きられる社会をつくる」というビジョンに向かって活動を続けてきました。このビジョンの達成のために、よりよく生きるための知恵の共有が必要だと考えています。

やりたいことに近い概念はなにか、を探しているときに出会ったのが「人間開発」という言葉。国連開発計画(UNDP)のマブーブル・ハック氏は、「人間開発」についてこのように語っています。

「人間開発とは、人々が各自の可能性を十全に開花させ、それぞれの必要と関心に応じて生産的かつ創造的な人生を開拓できるような環境を創出することです。 人々こそがまさしく国家の富なのです。 各々にとって価値ある人生を全うすることを人々に可能とす る、選択肢の拡大こそが開発なのです」

この人間開発という概念は、昨年のコラムでも引用していたものです。1年が経過して、なぜこれが必要なのかの解像度が高まってきました。

UNDPは開発途上国の経済、社会的発展のための活動をしている団体なので、用いられている言葉は国の目線ではありますが、ほとんどの話は開発途上国でなかったとしても当てはまること。

先進国と呼ばれるような国であったとしても、これらの「人間開発」に関連する要素が大切であることは変わりはありません。ただ、人々が多様である中で、一律にこうした支援をしていくことには限界があります。トップダウン的な人間開発ではなく、一人ひとりに合わせたボトムアップでの人間開発のアプローチを編み出していくこと。

「開発」という言葉はしっくりきていないので、「発達」など別の言葉で表現していきたいと思ってはいますが、目指していくことは一人ひとりが自らのウェルビーイングを向上させ、オーセンティシティを高め、その結果として多様性が実現していくこと。

「情報のセーフティネット」としてのメディアを運営し、必要な情報をアーカイブしていきながら、上記のような知恵を共有するための場、探究していくための場をつくっていきたい。メディアを知が集約された図書館のような位置付けにして、そこから必要な情報や知恵を引っ張り出して学んでいく機会をつくっていきたいと考えています。

soarは、すべての人の人権やウェルビーイングのための活動であり、その活動の枠組みはメディアにとどまりません。「誰もが自分の持つ可能性を活かして、生きられる社会をつくる」ために、2021年、soarは新たなスタートを切りたいと思います。

これまでsoarは非営利メディアを運営するためのお金をご支援いただくために寄付を募ってきました。来年からは、メディアの運営に限らず、すべての人の人権やウェルビーイングのための活動を展開していきます。活動を広げていくためには、みなさんからのご支援が必要になります。

解くべきイシューや目指す未来に共感してくださった方は、ぜひご支援いただけると幸いです。


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モリジュンヤ
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