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リモートワークがもたらす「生産性」

Amazonが週5日の出社を義務付けたことが話題になってました。米テクノロジー大手の企業のなかでは初めてですが、原則出社を求めるケースも増えてきていますね。

会社におけるコミュニケーションの速度や密度、それらによる仕事のスピードなどを求めるのであれば、原則出社とすることも理解できます。ただ、個人的にはこうした効率を求めることでリモートワークという可能性が後退してしまうことは損失が大きいと感じています。

「生産性」とは、そもそも生産諸要素の有効利用の度合いとされ、生産要素の「投入量」に対する「産出量」の割合で計算されます。会社における利益をはじめとする業績などを産出量だとすると、投入量となる生産要素を有効にしようとすれば、出社をしたほうがよいと考えられます。

ただ、ここにおける「産出量」をどこまでをスコープに収めるのか。そのために、投入すべき生産要素をどのように捉えるのか。それによって、「やはり原則出社がいい」という判断がいいのかどうかは少し変わってきます。

例えば、リモートワークは柔軟な働き方を可能にします。住む場所を自由にし、家族との時間も確保しやすくなる。このフレキシブルさが、働く上での自由度につながり、一人ひとりに選択肢を与えます。

働く人が将来や仕事に対してポジティブな感情を持ち、前進しようとする心の力のことは「心理的資本」と呼ばれます。リモートワークによって柔軟な働き方が可能になり、機会が失われることなく働けるというのは、こうした資本の充実につながる面もあると考えられます。

こうしたことは従来の生産性の考え方では、生産要素には含まれていなかったと思います。一方で、こうした要素は人が創造的に働いていくうえでは非常に重要なものです。従来は含まれていなかった心理的資本のような事象を資本として捉えたり、B corpやゼブラ企業のように会社にとっての利益を広く捉えたり、自社だけでなく社会の発展を考慮したりとなると、生産性の捉え方も変わっていくのではないかと。

リモートワークがもたらす「生産性」には、こうした側面もあると考えています。自分自身がそういった経営方針で会社を経営しているからというのもありますが、原則出社だけではない選択肢も社会のなかで当たり前のものになっていくことで生まれるポジティブな変化もあると考えています。

ロンドンやトロントではオフィス回帰の波は強くなく、出社の頻度も低い水準となっています。イギリスでは、週休3日の検討やつながらない権利の法案提出なども進んでおり、上記のような生産性の考え方があるのではないかとも思います(とはいえ、経済界は反発しているようなので、このまま進むかどうかはわかりませんが)。

そろそろ、「アフターコロナ」という表現も使わなくなってきましたが、以前WORKSIGHTの編集長、山下さんにインタビューする企画の編集を担当し、この先のワークスタイルがどの様になっていくのかの展望を記事にまとめました。今後、どのようにワークスタイルが変化していくのかを予想する上での参考になると思うので、今回のトピックに関心を持った人はぜひ読んでみてください。



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