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問いとソート・リーダーシップ

自身が経営しているinquireという会社の名前は、「問い」からつけました。インタビューをすることや、文章を書くこと、企画をつくることなどは、それ自体「問い」であり、「問い」によってつくられるものだと考えたからです。以来、会社を運営しながら、問いについていろいろと考えてきました。

問いと同じ重要度にはなりませんが、コンテンツづくりに関わる人間としては「ソート・リーダーシップ」という概念も、関心を持ってきたテーマです。ソート・リーダーシップについて語られる際、その説明は統一されていません。

「知識集約型企業におけるソート・リーダーシップの定義と育成の緊張関係」という論文では、ソート・リーダーシップの定義を「 信頼され、著名で権威のある情報源からの知識で、実用的であり、ステークホルダーに価 値ある解決策を提供するもの」とした上で、その言葉が誕生した背景について以下のように触れています。

ソート・リーダーシップという言葉は、ジョエル・カートマン(1998年)が影響力のある著書を出版した後に広まった: ソート・リーダーズ(Thought Leaders): ビジネスの未来に関する洞察』には、経営哲学への革命的な貢献を目指す12人の実務家や学識経験者が寄稿している。 オピニオン・リーダーシップ(Flynn et al., 1996)と呼ばれることもあるが、Rogers and Cartano (1962, p. 435)によって、他者の意思決定に大きな影響力を及ぼす人々と定義されている。 他者の意思決定に対して大きな影響力を行使する人々として、ソート・リーダーシップは、新規性と専門性の側面を含むオピニオン・リーダーシップの一形態であるとしている。

2021. William S. Harvey, Vince-Wayne Mitchell, Alessandra Almeida Jones and Eric Knight

ソート・リーダーシップは、オピニオン・リーダーシップやオーセンティック・リーダーシップ、レスポンシブル・リーダーシップなどのリーダーシップの概念とも関連が見られる他、ナレッジマネジメントやコミュニケーションにも関連することでもあるため、非常に注目しています。

国際社会経済研究所(IISE)が運営するnoteでは、ソートリーダーシップについての情報発信が行われているので、しばしばチェックしているのですが、自分にとって関心の強い「問い」と「ソートリーダーシップ」のつながりについて、京都大学 総合博物館 研究部情報発信系 塩瀬 隆之 准教授にインタビューした記事が掲載されていました。特に、以下のポイントが印象深かったので引用します。

ビジョンと同じく、「問い」も「授かりもの」として出会えるくらいの根源的な「問い」に出会って欲しいと私は思っています。自分の中に内なる関心事があり、世の中で今求められているものと、その関心事との間を埋めようともがくほどに考えつづけると、もう「それ」しかないような「問い」にたどり着くことがあります。世間の方が期待されるような、思わず立ち止まるほどに魅力的な「問い」とは、そういった考え尽くした先にしか出会えないものです。

(中略)

ソートリーダーとは、きちんと向き合えば誰でも言葉にできたかもしれない「思い」を、みんなに届く言葉で可視化できる人と言えるのではないでしょうか。ところが大企業の掲げるビジョンやミッションのなかにも、借り物の言葉に違いないと思うような地に足のついていないものが少なくない。そのような中途半端なビジョンやミッションでは、何らかの壁にぶつかったときに、もうそれ以上進むことができなくなってしまいます。

考え抜いて、デザインされた「問い」が、ソートリーダーシップにつながるまで 〜『問いのデザイン』著者の一人、京都大学総合博物館准教授の塩瀬隆之氏に聞く【前編】〜

このインタビューを読みながら、自分がやりたいことのひとつは、企業が根源的な問いに出会い、そしてその問いから生まれた思いをみんなに届く借り物ではない言葉にするための支援なのだろうなと再確認できました。

問いも、ソート・リーダーシップも非常に探究しがいのあるテーマです。今後も継続して探究をしていきたいと思っているので、興味のある人はぜひご一緒しましょう。

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