人は”人”にお金を払う

『ばらかもん』という漫画が好きで、新刊が発売されるのを楽しみに待っている。”ばらかもん”とは、五島列島方言で「元気者」という意味だそうだ。

『ばらかもん』は、有名書道家の息子である主人公が、自分なりの書道を見つけるべく、東京から遠く離れた島で生活するところから始まる。

自然からインスピレーションを受けて作品を書く様や、島の人たちと交流することで人間的に成長する姿が描かれている作品だ。

魅力的なキャラクターが数多く登場するので、楽しく読んでいくことができるのだけれど、見逃せないのは随所に登場する”作品”を生み出すことが仕事である人たちの姿。

主人公はもちろん、そのライバルや父親など、複数の書道家が登場する。彼らが一つの「書」を生み出すのに、どんな苦労を経ているのかが描かれている。

何かしら、自分で作り出すもので仕事をしている人であれば、刺激を受ける場面があると思う。以前、紹介した『ブルージャイアント』とはまた違ったベクトルの魅力がある。

『ばらかもん』の中でも、個人的に印象に残った台詞は、桐恵さんという主人公の父親の書道家のマネージャーをしている人物が、若くて才能はあるけれど生意気な書道家に対して放ったこの一言。

「どんないい作品書いても、結局人は人にお金を出すのよ。」

良い作品を生み出してさえいれば、人格や人に対する態度は問題ないーーなんてことが言われることもある。それが許されるのは、きっと、ほんの一握りの人なんだろう。

ほとんどの人は、作品だけではなく、それを作り出している作者の人となりとセットで価値を判断されると思う。人格が可視化されやすいインターネット時代であればなおさらだ。

自分は、人にお金を出してもらえるだけの存在なのか。どうすれば、お金を出してもらえるような存在足りえるのか。桐恵さんの台詞に触れてから、ずっとそんなことを考えていたりする。

本当に、漫画から得られる学びは多い。


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