
タスク切替時に発生する「注意残余(attention residue)」を知り、対応する
少し前に、タスク消化不良を解消するための方法を簡単にブログにまとめました。今回は、こうしたタスク消化不良が発生する要因のひとつである「注意残余(attention residue)」という概念の紹介と、それらに向き合うコツを紹介します。
人間の脳に向いていない「マルチタスク」
人間の脳は複数のことを同時に処理する「マルチタスク」が苦手です。私たちが日常的に「マルチタスク」をしていると思っていても、実際は短いスパンでタスクを高速に切り替えているだけだとされます。
現代に生きる人々は、日々発生するタスクたちへの対応が求められます。同時処理ではなく、タスクを切り替えて対応するといっても、切り替えのたびに脳は一時的に前の作業の情報を保持したり、次の作業の準備をしたりするためにエネルギーを使っている。結果として、脳内に前の作業の痕跡が残りやすくなっているといいます。
別のタスクに移行するとき、前のタスクが未完了だったり、心配ごとや未解決の事項が残っていたりすると、心理的に区切りがつけられず、注意が完全には切り替わりません。
たとえば、資料を途中まで書いていたのに急遽電話に出なければならなくなった場合、電話の内容に集中したくても、資料の文章をどうしようかと脳が考え続けてしまう、といったことが起こるイメージです。
タスク切換時に生じる「注意残余(attention residue)」
わたしたちは、スマートフォンの通知、SNSのタイムライン、チャットなど、常に目や耳にさまざまな刺激が飛び込んできます。絶え間なく処理される情報が多いほど、タスクとタスクの間での頭の切り替え機会も増えます。
このように、あるタスクから次のタスクへ切り替えようとする際に、前のタスクへの意識や思考が頭の中に残り続け、次の新しい作業へうまく集中できない状態を「注意残余(attention residue)」と呼びます。
この概念は、2010年前後にワシントン大学の組織行動学の研究者ソフィー・ルロイ教授によって提唱され、注目を集めました。
注意残余が生じると、脳のリソースが「前のタスクの残り」にも割かれてしまうため、集中力が削がれます。結果として、全体のパフォーマンスが下がり、作業に余計な時間がかかる恐れがあります。ストレスも蓄積し、ミスも起こりやすくなってしまう。
「注意残余(attention residue)」を乗りこなすコツ
注意残余が生じないようにするには、以下のようにいくつかのコツがあります。
小さなタスクでも終わりを明確にする
メモやアウトプットで“頭の外”へ出す
シングルタスクを意識してブロックタイムを確保
通知をオフにする
短い休憩を定期的に挟む
小さなタスクでも終わりを明確にする
「一つの作業が完了した」という明確な区切りをつけることで、頭の中でそのタスクを締めくくりやすくなります。チェックリストに完了を記入する、進捗管理ツールにステータスを更新するなど、小さなアクションでOK。
メモやアウトプットで“頭の外”へ出す
書き途中のアイデアや気になる事柄は、メモやタスク管理ツールに書き留めて頭の中から一旦出しましょう。脳内にある情報を外部化することで、次のタスクへ意識を向けやすくなります。
シングルタスクを意識してブロックタイムを確保
タスク切り替えの頻度を減らすために、スケジュールを1時間単位などで区切り、同じ種類の作業をまとめて行いましょう。メール対応の時間帯、企画書作成の時間帯、会議の時間帯など、ジャンルごとに“ブロック”を作って連続的に作業すると、タスク切り替えによる注意残余が軽減します。
通知やSNSをオフにする
スマートフォンやPCからの通知が多いほど、タスクの切り替え回数は増えます。集中したいときは可能な限り通知をオフにし、SNSを閉じるなど、外部からの刺激を遮断しましょう。
短い休憩を定期的に挟む
長時間作業を続けるより、短い休憩をこまめに取った方が、タスク切り替え時の注意残余が減ることがあります。休憩時は意識的に深呼吸をしたり、ストレッチしたりして脳をリセットしましょう。
集中力や生産性を下げない方法を練習する
「注意残余」という現象は、私たちの集中力や生産性を下げる大きな要因のひとつです。マルチタスクや頻繁なタスク切り替えが当たり前になりがちな現代では、誰にでも起こり得る問題といえます。
しっかりとタスクを区切り、情報やアイデアを頭の外に出し、休息をはさむ。このようなステップを意識するだけで、頭の中のモヤモヤを解消しやすくなり、パフォーマンスがぐっと向上するはず。
ただ、脳が意識的なタスクから離れ、頭に思い浮かぶことを自由に関連付けを始めることを「マインドワンダリング」と呼び、新しいアイデアや解決策を見つけ出す手助けをすることもあるといいます。
注意残余が生じないようにできたほうがいいですが、時折マインドワンダリングが起きたほうがいい可能性もあるというのが少々悩ましいところです。
いいなと思ったら応援しよう!
