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inquireは「編集」の価値を広げるリーディングカンパニーを目指します

こんにちは、モリジュンヤです。2015年に個人会社としてスタートし、ギルド型組織としての実験を重ねてきたinquireも、今月で4年が経ちます。

会社とは面白いもので、続けている間にそのあり方を変容させてきています。フリーランスや副業といった形式で一緒に仕事をする業務委託の人は40名前後、社員という契約形態で関わる人は4名になりました。

最近は、改めてinquireがどこを目指すのかを考えています。コンテンツづくりのプロ集団として、「編プロ」と呼んでいただくこともありますが、僕たちは編プロとは異なる価値創出を目指していきたい。

そのために、何に挑戦するのか。良い機会なのでまとめてみました。

事業や組織に貢献する「オウンドメディア」が必要

色んなオウンドメディアの閉鎖のお知らせが届くようになりました。オウンドメディアは定期的に熱が上がったり下がったりしている印象です。

日本語圏で注目されるようになったのは、インフォバーン創業者の小林弘人さんが『メディア化する企業はなぜ強いのか?』を出版された2013年あたりからかと思います。

フリーランスのときにお手伝いしていた事例が、2014年にイノーバ代表の宗像淳さんが出版された『商品を売るな』に掲載いただいたりして、しばらく注目のテーマでした。

「ブーム」になって数年が経ち、地に足の付いたオウンドメディアとの向き合い方が求められるようになりました。環境変化に適応できなかったり、採算が合わなくなったり、会社の戦略が変わったりすると、オウンドメディアは継続できません。様々な理由でオウンドメディアの閉鎖が起きています。

最初からゴール設定が明確で、達成されたら閉じる、といったメディアもあります。その場合、掲載されたコンテンツが残るようにするための工夫をスタート時点などでできると良いなぁと思っています。

「ブーム」と言われることなく地に足のついた取り組みにしていくために、しっかりと結果や創出する価値にフォーカスして取り組んでいく必要があります。

先日、こうしたオウンドメディアの流れに関してのイベントも行いました。当日の様子は下記を見ていただけたらと思います。

目的を整理した上でのメディア設計

とはいえ、事業会社が自ら情報発信をするということ自体がなくなろうとしているわけではなく、積極的な取り組みも行われています。

継続のためにはオウンドメディアの目的を整理し、目標を設定し、体制をつくていく必要があります。inquireでは、最近のオウンドメディアは、大きく以下の3つに分けられると考えています。

オウンドメディアは、それぞれの目的に応じて、プラットフォームの選定やコンテンツの方針、運用体制、目標管理などを行っていく必要があります。目標はPVでないことも十分考えられます(むしろ、PVが指標にならないことのほうが増えていきそう)。社内外から情報発信を担当する編集者は、目的を整理した上で、メディアの設計をしなければいけません。

メディアをプロトタイピングする

目的の整理や設計を行った上で、プロトタイピングするつもりでメディアの運営に伴走するのが編集者の役割です。スタートのタイミングで、正解を導き出せるケースは稀です。走りながら試行錯誤していかなければならないのはメディアも同じ。

山口周さんの新著『ニュータイプの時代』でも、正解がない時代にはどれだけ失敗できるかの話が出ていましたが、メディアも「こうしたら正解」というものがあるわけではありません。早めに小さく始めてみて、失敗をしながら改善していくようなやり方をとっていくべき。

僕は、デザイン評論家の藤崎圭一郎さんがおっしゃる「メディアプロトタイピング」という言葉が昔から好きで、よく使っています(藤崎さんが意図している使い方とは違っているかもしれませんが...)。まさに、メディアプロトタイピングが必要な場面が増えていると思います。

BtoB領域における編集者、ライターの層の薄さ

組織は自社のカルチャーや思想を伝える必要が出てきており、事業も利便性の訴求のみならず情緒的な部分やソートリーダーシップのような業界をリードする姿勢を示す必要が出てきています。

インハウス化する、オウンドメディア以外の手段をとる、など発信する上での選択肢はいろいろありますが。情報発信はより重要になる中で課題になるのが担い手の少なさです。

inquireがnote proのパートナーとして参加が発表された際にも書きましたが、情報発信のニーズに対して供給側のプレイヤーの数が少ないのも課題です。加えて、一つひとつのチームが大きいわけでもなく、多くはスモールチーム。これではなかなか市場が広がっていったり、業界が盛り上がることは難しい。人材が育つ環境が整ったり、キャリアの選択肢として有望になることも難しいと考えられます。

オウンドメディアの閉鎖など、逆風に映るニュースもありますが、編集者やライターが価値を発揮できる場面は増えています。ただ、価値を発揮するためにインストールしなければならない考え方があったり、継続して価値を生み出し続けるために業界自体にアプローチする必要が出てきていると考えています。

「編集」という職域のポテンシャルを広げる

主に事業会社におけるオウンドメディアを中心に話してきましたが、「編集」のポテンシャルはもっと広いはず。そのことに編集に従事する人たちがもっと気づき、価値を磨き上げていかなくてはいけない。

今、「編集」という領域への注目度は、むしろ編集外で高まっています。店舗など実空間をメディアと捉える動きもあり、リテールなどのビジネスにおいて編集者的な役割が必要になるという話がされることもあります。経営や事業づくりにおいて言葉やストーリーの重要性が注目されることも増えています。どこも編集者が価値を発揮できるはず。

「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を2019年に受賞することになった建築家の磯崎新さんは、「建築外的思考」を持った人物としても知られています。建築外的思考とは、美術、音楽、演劇、映像、写真など、「建築外」の文化への思考を指し、こうした他分野との交流から「硬直化した近代(建築)に対して、その解体と再編を試みる」思考だそうです。

編集も「編集外的思考」とでもいうべき視点を持ち、様々な分野から参考になる要素を取り入れていかなければいけません。今は編集の「外」だと認識しているところには、さらに価値を発揮できるはずの領域が広がっている。

編集の市場価値を上げるリーディングカンパニー

では、どうやって現状の課題を解決しながら、編集の価値を広げていくのか。幸い、参考にできるモデルケースもあります。

今、編集という領域がぶつかろうとしている壁は、数年前に「デザイン」がぶつかった壁に似ています。デザインも狭義の捉えられ方をする場面が多かったですが、IDEOによる「デザイン思考」の発信に始まり、最近では「デザイン経営」が注目されるなど、より広義の意味で使われることも増えてきました。デザイナーがビジネスや経営に近づく場面も増えています。

もちろん、言葉の定義が広がったことやデザイナーが向き合うべき領域が広がったことによる弊害もあるかと思いますが、デザイナーという職種の市場価値は上がっており、能力のあるデザイナーは引く手あまたです。

デザインの価値が高まった背景には色々な理由があると考えられますが、キャリア選択の充実、労働市場における価格、リーディングカンパニーの存在などがあると考えています。

事業会社か、制作会社か、フリーランスかを選ぶことができれば、デザイナーという同じ職種でも働き方の幅が広がります。また、事業会社の中でもポジションができれば、労働市場における価格もつきやすくなります。制作会社かフリーランスかだけだとなかなか参考になる市場価格になることは難しい。

編集者は、一部の企業ではインハウスエディターがいますが、まだまだ少ないのが現状です。当たり前のように事業会社の中で編集者の募集がある状態が作られたら、編集者をキャリアとして選択しやすくなるはず。また、編集は事業会社以外でもクライアントワークを手掛ける会社の存在感も増えていかなくてはいけません。小さいプレイヤーしかいないとなると、安心して転職することも難しくなってしまいます。

そして、大きいのがリーディングカンパニーの存在です。職種や業界の価値を押し上げていこうと発言と行動をする会社が存在することで、価値が上がっていったと理解しています。デザインにおいてこの役割を果たしたのが、Goodpatchだと思います。「デザインの力を証明する」というコーポレートミッションの通り、様々な困難を乗り越えながらデザイナーの市場価値を高めるのに貢献してきています。

inquireは、デザインにおいてGoodpatchが果たしたような役割を、編集という領域において果たさなくてはいけない、そう考えるようになりました。

「編集」で社会の価値創出を支援する

第二創業期を迎えるinquireは、編集におけるリーディングカンパニーを目指します。

編集を通じて事業や組織に貢献して価値を証明し、属人化することなく再現性をもたせ、人材が育つエコシステムを作り、編集者の市場価値を上げていくことに挑戦します。

こうした目的を達成するためには、自分たちの事業や組織を成長させなくてはいけません。inquireは、これまでの組織づくりの文化を引き継ぎながら、自分たちなりの成長に取り組んでいきます。

編集という職能は、社会課題の解決や日常生活においても価値を発揮するものだと捉えています。よりよい社会を構築していくために、編集に携わる人を増やす。そのために、市場価値を高めていく。中長期を見据えながら、取り組んでいきます。

いろいろ告知

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